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【令和8年度】税制改正要望まとめ|各省庁の主な要望と注目ポイント

令和8年度の税制改正に向け、各省庁が財務省や総務省に提出する「税制改正要望」が出揃いました。要望の内容は、既存の優遇措置の延長・拡充から新制度の創設まで多岐にわたり、社会や経済の動きに合わせて変化しています。

これらの要望は業界団体の意見も踏まえて与党税制調査会で議論され、例年12月中旬には「税制改正大綱」として取りまとめられます。

本記事では、令和8年度の税制改正に向けた各省庁の主な要望を解説します。企業経営において注目すべきポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

目次

税制改正要望とは
令和8年度税制改正要望(各府省庁提出分)の概要
税制改正要望から改正法施行までのスケジュール
税制改正要望を経営戦略に活かす方法
まとめ

税制改正要望とは

税制改正要望とは、各省庁や業界団体、企業などが「税制をどのように変えるべきか」という意見を国に提出する制度です。毎年夏ごろまでに取りまとめられ、令和8年度分については令和7年8月29日までに提出されたものが対象となりました。

提出された要望は、与党の議論を経て翌年度の改正方針を形づくる基盤となるため、企業経営にも少なからず影響します。そのため、動向を押さえておくことは、自社に関連する制度改正を早期に把握するための重要な手がかりとなるでしょう。

ただし、すべての要望が実現するわけではなく、不確定な情報も多く含まれています。「どの要望が実際に政策に反映される可能性が高いか」を見極めることが大切です。

そもそも税制改正とは

税制改正とは、その名の通り「税金に関する仕組みを見直し、修正・変更すること」を指します。

税制は、国や自治体が公共サービスやインフラを維持するための基盤ですが、社会や経済の状況は常に変化しています。そのため、税制も固定的なものではなく、時代や政策課題に合わせて定期的に調整する必要があります。

日本では通常、年に1回のペースで税制改正が実施されます。改正を通じて、その時点で必要な税収を確保すると同時に、制度と現実のズレを修正し、税制が本来の役割を果たせるようにしています。

ただし、改正は国の財政や政策目的を踏まえて行われるため、個人や企業にとっては負担が軽くなる場合もあれば増える場合もあります。影響の大きさは所得や事業内容、資産状況によって異なるため、自身に関わる改正内容を正しく理解し、必要に応じて早めに対応を考えておくことが大切です。

令和8年度税制改正要望(各府省庁提出分)の概要

各府省庁の主な要望は、下表の通りです。

今回の税制改正要望は、防衛力強化や国土強靱化といった国家的課題から、研究開発投資や中小企業支援、さらには地域経済や生活環境の維持まで、多岐にわたっています。各省庁は、それぞれの政策課題や現場のニーズを踏まえ、より実効性の高い税制措置を打ち出しているのが特徴です。

特に近年は、以下のような国の成長戦略や社会課題に直結する分野への要望が目立ちます。

● 経済安全保障や防衛力強化につながる施策
● カーボンニュートラルや脱炭素化に向けた投資促進
● 中小企業の事業承継や設備投資を後押しする制度

今後の議論では、こうした提案がどのように制度化され、企業経営や個人の税負担に影響していくのか、引き続き注視する必要があるでしょう。

参照:財務省|令和8年度 税制改正要望(外部リンク)

税制改正要望から改正法施行までのスケジュール

税制改正は、以下のように要望提出から法律の施行までにおよそ半年以上を要します。

1. 8月頃:企業・団体・省庁が税制改正要望を提出
2. 9月〜10月頃:財務省・政府税制調査会で要望内容の整理・検討
3. 11月〜12月頃:与党税制調査会で最終調整
4. 12月中旬:与党税制調査会が「税制改正大綱」を決定・発表
5. 12月下旬:内閣が閣議決定し、正式な政府方針として発表
6. 1月〜2月頃:政府が税制改正法案を国会に提出
7. 3月頃:国会で審議・法案成立・改正法の公布

このように、要望はすぐに制度化されるのではなく、複数の段階を経て精査されるプロセスを踏むのが特徴です。経営者にとっては、年末の「大綱」発表が最も注目すべきタイミングといえるでしょう。

税制改正要望を経営戦略に活かす方法

税制改正要望は、単に税制に関する意見提出の場ではなく、企業にとって経営戦略に活かせる情報源でもあります。福利厚生や報酬制度、資金運用など、税制が影響する領域は多岐にわたるため、最新の動向を把握し、戦略的に制度設計や施策に反映することが重要です。

税制改正の動向を先取りして社内制度を整備しよう

税制改正の要望や大綱を早めに確認しておくことで、自社の制度を事前に準備できます。たとえば、福利厚生や報酬制度の見直しを検討し、規程の更新や従業員への周知をあらかじめ進めておけば、改正後に慌てる必要はありません。

重要なのは、単に情報を追うだけでなく、自社の仕組みにどう落とし込むかを意識することです。税制の変化を実務に結び付けていくことで、経営判断や人材施策の質を高め、改正を成長のチャンスに変えられるでしょう。

なお、名古屋総合税理士法人では、年間80本以上のセミナーを開催し、税制改正や経済動向など時事性の高いテーマについて、業界に先駆けて詳細な情報を提供しています。実務に役立つ知見を得たい方は、お気軽にご参加ください。

まとめ

税制改正要望は、一部の企業や団体だけのものではなく、あらゆる企業にとって経営に直結する重要な情報です。提出時期や政策への反映の仕組みを把握しておくことで、経営判断や人事施策の計画をより的確に行えます。政策動向を「自社には関係ない」と切り離さず、制度運用にどう組み込むかを考えることが、先を見据えた戦略につながるでしょう。

なお、今回紹介した内容はあくまで一部の要望に過ぎません。各省庁や業界団体からもさまざまな要望が公表されているため、関心のある分野について情報を収集することで、自社の制度設計や施策をより柔軟に、効果的に進められるはずです。