NA通信vol.84「遺言書の作成について」
自分の財産をどのように後世に残していくか…不動産オーナー様をはじめとする資産家の方が直面する大きな問題です。誰にどの財産を残したらいいのか?相続税の支払いは可能か?財産をめぐり相続人の間で争いが起きないか?など、不動産オーナー様の悩みは尽きないと思います。今回は、相続人同士で争いが起きないように、スムーズに財産を相続するための対策として、遺言書についてお伝えします。
一般的に次のような方は、遺言書を書くことをオススメします
● 子供がおらず、配偶者(妻・夫)と兄弟姉妹が相続人となる人
● 相続人となるべき人が行方不明・遠方に離れて生活している人
● 渡したい財産と渡したい人が明確な人 例)会社経営者が自社株を後継者に相続させる。
● 家族関係が複雑・相続人の数が多い人 例)相続人に先妻の子と後妻がいる。
● 相続人以外の人に財産を渡したい人
● 子遺言書を作成済みの人(書換えの必要はないか?)
● 相続人が子供のみになる、二次相続が想定される人
遺言書には、「手書きの遺言」と「公正証書遺言」の主に2つがあります
それぞれメリットとデメリットがありますが、一番確実な「公正証書遺言」がおすすめです。2019年にはおよそ11万件の公正証書遺言が作成されました。これは、10年前の1.4倍です。一方、手書きの遺言が作成された件数は公表されていませんが、相続人が家庭裁判所に提出し確認を受けた件数が約2万件です。おそらく公正証書遺言よりも手書きの遺言を作成する人の方が多いでしょうから、自分に不利な遺言を発見した相続人による破り捨てや紛失の件数がいかに多いかが分かると思います。 公正証書遺言は、基本的にこれらの破り捨てや紛失、無効となることはありません。
遺言書作成のポイント
遺言書がない場合には、相続人同士で話し合いをして財産分けを決めなければなりません。ところが、相続税の申告期限までに、スムーズに財産分けが決まらない場合も多いのです。相続税の申告期限は被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内ですが、申告期限までに財産分けが決まらない場合は、いったん法定相続分で相続したと仮定して申告・納税を行うことになります。もし、このように財産分けが決まらないまま相続税の申告を行うと、「小規模宅地の特例」や「配偶者控除」といった、相続税の軽減特例が使えないため、余計な相続税を払わないようにするためにも遺言書の作成は必要なことです。そのため、「財産がどれくらいあるのか把握する」「誰に何を残したいかリストにする」「納税資金をあらかじめ把握する」といった事前の準備が大切になります。
また、遺言の書き方が悪いとかえってトラブルになることもあるため、相続人同士で争いが起きないようにするには次のような点もポイントになります。
遺留分に十分配慮して財産の配分を決める
「遺留分」とは、子供など兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限の相続財産保障額のことをいいます。遺言書では、「遺留分+α」の余裕をもった財産の配分を心がけましょう。
遺言執行者を指定しておく
「遺言執行者」とは、遺産を管理し、遺言で指定された人へ渡す(名義変更する)行為を行う人を指します。遺言執行者は、税理士等の専門家、家族、知人などでもなることができますので、決めてお きましょう。ただし、遺言執行者を個人にすると先に死亡してしまうリスクがあるため、確実に遺言執行が行える税理士法人等を指定していただくことをオススメします。
貸金庫を契約されている人は、遺言執行者に金融機関の貸金庫の開扉等の権限を付与しておく
権限を付与しておかないと、相続人全員の同意が必要となる場合があります。
「賃貸不動産の敷金」など、財産とひも付きになっている債務は、その財産の承継者が負担する
亡くなった方(遺言者)の債務は、遺言で承継者を決めておかないと、相続人が法定相続分により負担することになります。
手持現金の多い人は、遺言の対象財産に「現金」を入れておく
入れておかないと「その他財産」に現金が含まれてしまい、財産配分のバランスが崩れてしまいます。
財産を渡す理由(想い)は付言事項として、財産配分の記載より前に書いておく
付言事項を書く場合は、相続人全員に対して簡潔に記載し、特定の方に恥をかかせないような配慮が大切です。
ネット上や解説書に掲載されている遺言のひな形を丸写しで作成しないこと
実在しない財産を遺言に記載すると、遺産分割と税務調査でトラブルになります。
まとめ
相続が発生したとき、もし遺言書が無ければ、相続人同士で財産分けの話し合いを行い、誰がどの財産を取得するのかを「相続人全員」の合意で決めなければいけません。遺言書があれば、財産を取得する人が遺言書によって決まっているので、相続人全員で話し合うどころか顔を合わせる必要もなくなり、相続人同士が揉める可能性が確実に少なくなります。相続トラブルを防ぐために、今から遺言書を作成しておきましょう。また、名古屋総合税理士法人では、「争続にならないための遺言の作り方セミナー」をはじめ、様々なセミナーを定期的に開催しておりますので、是非ご参加していただき、お気軽にご相談ください!
知って得するコーナー
今の時期は、年末調整や確定申告のために生命保険料控除証明書を目にされる方も多くいらっしゃいます。この控除証明書は1年間に支払った保険料がいくらかを証明するもので、1年間に支払った保険金額に応じて最大12万円の所得控除が可能になります。ところで、ご自分が加入している生命保険の保障内容がどうなっているのかご存じですか?2015年に発表されたデータでは生命保険未請求額がおよそ20億円にもなることが明らかとなり、社会問題になりました。このことから自分が加入している生命保険の保障内容を把握していない方が意外と多くいることがわかります。1年に1回、生命保険料控除証明書が届くこの時期に、ご自分の生命保険契約の内容を確認してみてはいかがでしょうか?最近では新型コロナウィルスの影響で、医療保険や介護保険などを見直そうというニーズも多くあります。この分野の保険は、医療の進歩に合わせてそれにマッチした新商品が開発されるため、古くから契約している保険ではカバーしきれないことも多々あります。契約している生命保険の保障内容が、今の生活スタイルにあっているか、万が一の備えになっているかどうか確認したい方は、ぜひこの機会に名古屋総合税理士法人にご相談ください。お待ちしております。
NA社員コラム
初めまして!奥田篤史と申します。私は、地方銀行、不動産業を経て名古屋総合税理士法人に昨年8月に入社しました。10年以上の銀行生活では、何百社の決算書などを拝見し、そのお客様にあった融資提案をして参りました。1つの思い出として、メインの金融機関にて、数十年と担保が外れない事を危惧しているお客様がおみえでした。当時取引はないものの、担保解除及びプロパー貸出を実行し、お客様の期待に沿うことができました。今なお、喜んでいただいた方の感謝のお言葉や笑顔は忘れることはありません。銀行業と業務は違えど、お客様の側に寄り添う存在であることに変わりなく、私のモットーである、「お客様のためになるご提案」を第一に、みなさまのお役に立てるように頑張って参ります。P.S.銀行折衝などでお困りごとございましたら是非ともご相談下さい!
今月の代表の一言
新型コロナのピンチをチャンスに変えるにはどうしたらよいか?とお考えの方に朗報です。
2020年度第3次補正予算及び2021年度税制改正により、新型コロナ禍において変化する企業を応援する補助金・減税制度がたくさん盛り込まれました。まず「事業再構築補助金」があります。これは、新分野進出や事業再編、M&A等を行った場合に、建物・設備・研修・広告などへの投資金額の2/3が補助される制度で、補助額は最大6,000万円と高額です。また、この補助金の予算規模は約1.1兆円と超大型なので、採択率もかなり高いと予想されます。申請するには、半年以内のどこか3ヶ月の合計売上高が前年同期比10%以上減少していることなどの条件があります。
次に、M&Aによって他社を引き継いだ会社は、上記補助金や経営資源引継ぎ補助金の受給対象になるばかりでなく、投資額つまり株式買取り金額の70%を買取り時に経費化できる減税制度が導入されることも発表されています。新型コロナの影響により、生活スタイルや働き方、ビジネスなどが変化しています。社会の変化に合わせて自社を変化させようとする企業にとって、今はこのような支援策を有効活用するチャンスです。
ピンチをチャンスに!補助金のことを詳しく聞きたい方は、是非弊社にご連絡ください。