NA通信vol.89「教育資金一括贈与の 非課税特例の 期限延長について」
2021年度税制改正により教育資金の一括贈与の非課税特例が2 年延長され2023年3月31日まで適用できることになりました。
教育資金の一括贈与の非課税特例とは
概要
教育資金一括贈与の非課税特例は、若い世代へ教育のための資金の移転を促進するため2013年に創設された制度で、原則
として30歳未満の子や孫へ、教育のための資金を最大1,500万円まで非課税で贈与できる特例制度です。具体的には、贈与者(祖父母)が受贈者(子・孫)名義の専用の預金口座に教育資金を一括して振込みます。その後、実際に教育資金を支払った際は、領収書等を金融機関に提出することで、支払った金額と同額がその口座から払い出されます。税務署への贈与税の特例申告は、金融機関が手続きをしてくれます。
メリット
もともと教育資金の贈与は非課税です。孫の学費や入学金の支払いのため、そのつど祖父母が贈与した場合であっても贈与税はかかりません。では、この教育資金一括贈与特例のメリットはというと、孫が小さく未就学のため教育にお金がかから
ない(教育資金として非課税になる贈与ができない)ときでも、一度に1,500万円もの相続財産を子や孫に移転できるため、相続税の節税になるということです。また、この教育資金一括贈与による贈与財産は、教育資金にしか使えないため、孫が遊びほうけてしまったり、働かなくなってしまうような心配もなく、確実に教育資金として使って欲しいという祖父母の思いをかなえることができます。
教育資金の範囲
教育資金については次の2つに分けられます。
① 1,500万円までの非課税枠の対象となる、学校等に対して直接支払われる費用
(例)入学金、授業料、入園料、保育料、入学試験の検定料、修学旅行費 、学校給食費 など学校等における教育に伴って必要な費用など※1 業者ではなく、学校等に直接支払われるものが対象
② 500万円までの非課税枠の対象となる、学校等以外に対して直接支払われる費用
(例)学習塾やそろばんなど教育に関する習い事の費用、水泳や野球などのスポーツ、ピアノなどに関する習い事の費用及び習い事に必要な用品(塾や教室名の領収書が必要)、通学定期券代金、海外留学や転入学時の引っ越しの際の交通費、学校が必要と認めたランドセルなど
2021年度税制改正により、次の2つの制限が加えられました。
A:改正前は、贈与の日から3年以内に贈与者が亡くなったときに限って、使い残しに対して相続税が課税されていましたが、改正後は死亡までの年数に関わらず、使い残しに対して相続税が課税されてしまいます。ただし、次のどちらかに当てはまれば相続税は課税されません。
・受贈者(子・孫)が23歳未満である場合
・受贈者(子・孫)が学校や国が指定する専門学校等に通学している場合
B:受贈者が孫の場合には、使い残しに対して課税され、相続税が2割加算されて1.2倍に増えてしまいます。例えば、祖父母が、大学生の孫に教育資金の一括特例贈与を行い、その後亡くなった時点で孫の年齢が23歳以上であり、学校や専門学校にも通っていない場合には、使いきれなかった教育資金の残額に対して通常の1.2倍の相続税がかかってしまいます。逆に孫が産まれて間もない時期に、教育資金の一括贈与を行い、その後亡くなった時点で孫の年齢が23歳未満であれば、教育資金の残額に相続税はかからないため、相続税の節税になります。
30歳の時点で使い残しがある場合
原則として孫が30歳に達した時点で使い残しがある場合は、その残額に対して贈与税がかかります。ただし、30歳の時点
で孫が学校や専門学校に通っている場合には、その時点では贈与税はかからず、学校や専門学校を卒業する日か40歳に達
する日のどちらか早い日までは、使い残しに対して贈与税はかかりません。
まとめ
今回の改正により教育資金一括贈与の非課税特例の内容に一定の制限が加えられましたが、まだまだ相続税対策として有効に使える制度です。例えば、遺産総額が2億円の方で相続人がお一人の場合、相続税の限界税率が40%となるため、本制度を利用し1,500万円の教育資金贈与を行えば、1,500万円×40%=600万円の節税が可能です。2021年4月以降に教育資金一括贈与の非課税措置を利用する際は、贈与者と受贈者の年齢や贈与金額を検討する必要があります。相続税の節税をご検討中の方は、お気軽に名古屋総合税理士法人までご相談下さい!
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