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税務調査の対応は税理士に任せる?確率や時期、中小企業が取るべき対策

「税務調査」は、税務署が企業の納税状況を確認するために行う調査です。中小企業も対象となるため、周囲の企業に税務調査が入り、修正申告や多額の追徴課税を支払うことになったという話を聞くと、自分の会社も大丈夫だろうかと不安になる経営者も少なくないでしょう。実際、令和4事務年度には、特に調査が必要と判断された6万2000件(前年比152.3%)の法人に対して実地調査が行われています。税務調査で指摘を受けると、加算税や延滞税が追徴課税されるため、いかに指摘を受けないようにするかが重要です。そこで本記事では、税務調査の概要から税務調査に入られやすい企業の特徴、取るべき対応について詳しく解説します。

目次

中小企業の税務調査とは
税務調査の対象となる企業5つの特徴
税務調査の流れ
税務調査に入られた企業が取るべき対応
まとめ

中小企業の税務調査とは

税務調査とは、国税局や税務署が納税者の申告内容を審査し、必要に応じて修正を要求する手続きです。日本の税制では、申告納税制度が採用されており、納税者自身が税額を計算し申告・納付する仕組みです。しかし、この過程で誤った計算や虚偽の申告が行われる可能性もあります。税務調査は申告の誤りや不正を発見し、正確な納税を促進するために重要な役割を果たしているのです。そのため、適切に税務手続きを行っている納税者であれば、税務調査の通知が届いても恐れることはありません。

税務調査が入る確率

令和4年度の調査実績に基づくと、法人が税務調査を受ける確率は約2.0%です。なかでも、実地調査を実施された企業の約80%に何らかの間違いが指摘されています。ただし、あくまで実地調査を実施した場合の割合です。税務調査は、申告内容に不審な点がある、または脱税の疑いがある企業や個人に対して行われます。税務調査の確率が低いからといって安心できるわけではありません。また、税務署は特定の業種や規模、取引内容に注目して調査対象を絞り込むケースもあります。そのため、税務調査に備えて、適切な帳簿管理や正確な申告を行うことが重要です。

税務調査が来るタイミング

税務調査が「いつ」「どこで」「誰に」行われるかは具体的な予測はできません。しかし、税務署が調査をしにくい時期を把握することで、ある程度の見当をつけられます。例えば、確定申告時期の2〜3月は税務署が非常に忙しい時期であるため、新たな税務調査が行われることはほとんどありません。また、税務署員の人事異動が毎年7月に行われることから、その直前の5月や6月も新しい調査を始めるには適さない時期です。このため、7月から12月にかけては税務調査の通知が届くことが多い傾向にあります。日頃から正確な納税申告と帳簿の整理を徹底しておくことで、いざ税務調査が入った際にもスムーズに対応できるでしょう。

税務調査の対象となる企業5つの特徴

税務調査の対象となりやすい企業の特徴は、下記の5つです。

売上が急激に増加している
同業他社と比較して所得率が低い
過去に不正が多い業種に該当している
SNSで生活や資産を公開している
赤字企業でも対象になる

なお、税務調査は、法人に限らず個人事業主も対象となります。例えば、ネットショップを営んでいる個人事業主や、パートタイマーや内職をしている主婦なども対象です。また、相続税に関しても税務調査が行われます。

売上が急激に増加している

売上が大きく変動する企業は、税務調査の対象になるリスクが高まります。特に前年度と比べて売上が大幅に減少しているケースでは、意図的な売上の隠蔽や過少申告が疑われます。また、売上が多ければ、それに応じて納税額も増えます。規模の大きな企業も、税務調査の対象になりやすい傾向があるでしょう。

同業他社と比較して所得率が低い

税務署は、売上に対する所得の割合である所得率を重要視しています。例えば、同じ業種の他社が一般的に10%の所得率である中で、自社が2%と極端に低い場合、「利益が適正に申告されていないのではないか?」と疑われやすくなります。

過去に不正が多い業種に該当している

税務署は、特定の業種の中から税歴表やコンピュータ分析を使って、調査対象となる企業を選び出します。そのため、税務調査は事業規模や納税額に関係なく、どの企業も対象になる可能性があります。しかし、調査の重点分野は毎年変わることがありますが、同じような業種が頻繁にリストに挙がる傾向があるのも事実です。特に、不正が多く発見される以下の上位10業種は優先的に調査される傾向があります。

1. 飲食店
2. 廃棄物処理
3. 中古品小売
4. 土木工事
5. 職別土木建築工事
6. 医療保険
7. 一般土木建築工事
8. 管工事
9. 自動車・自動車小売
10. 美容

特定の業種は特に税務調査を受けやすいと言えるでしょう。

SNSで生活や資産を公開している

日本では多くの人がSNSを利用しており、その中には経営者や個人事業主も多数含まれています。なかには、売上や収支に関する報告をSNS上で公開している方を目にした方もいるのではないでしょうか。税務調査官は、調査を実施する前に対象となる企業や個人に対して、事前に詳細な調査を行います。調査にはもちろんSNSも含まれます。SNSを通じて、申告された以上の収支を示唆する投稿があれば、その情報を基に調査が進められるケースもあるでしょう。実際に、SNSでの生活や資産の公開が税務調査の引き金となった事例があります。成功した事業手腕と共に、豪華な生活や高価なアイテムの公開が税務署の注目を浴び、税務上の問題が浮上した事例です。SNSでの発信や公開は企業や個人の税務調査のリスクを高める要因となり得るでしょう。

赤字企業でも対象になる

税務調査は、法令に基づき、企業や個人が正しく税金を申告・納付しているかを確認するための調査です。実際、令和4年度では約6割が赤字企業ですが、決算が赤字であっても、申告内容が正確であるとは限りません。たとえば、業績が本来黒字でありながら意図的に赤字を申告して脱税を図る悪質な企業も存在します。そのため、赤字決算を申告している会社でも、申告が正確であるかどうかを確かめる対象となります。

税務調査の流れ

税務調査は、以下の手順で進められます。

1. 事前調査
2. 事前通知
3. 税務調査
4. 調査報告
5. 修正申告

税務調査は基本的に任意で進められますが、税法に基づいて納税者の申告内容が正確かどうかを確認する重要な手続きです。テレビや映画のイメージで、突然大勢の税務官がやってきて、会社のあらゆる所を徹底的に調べる場面が描かれているのを見たことがある方も多いでしょう。しかし、強制調査(通称:マルサ)は、国税局査察部が裁判所の許可を得て行う強制調査の割合は全体の1%にも満たないほどです。まず、税務調査で指摘された問題に基づき、税務署からは修正が必要とされる項目や内容がまとめられた通知が届きます。通知は最終的なものではなく、納税者はこれをもとにして修正申告の必要性を検討します。まずは税理士と協力して、提出された修正内容をしっかり確認し、どのような修正を受け入れるか、どこに対して異議を申し立てるかを決めましょう。なお、任意の税務調査でも、納税者は調査自体の拒否はできません。しかし、健康上の理由や急な商談など合理的な理由があれば、日程の変更は可能です。

税務調査に入られた企業が取るべき対応

税務調査に入られた企業が取るべき対応は、以下の5つです。

顧問税理士と打ち合わせをする
事前に必要書類を準備する
協力的な姿勢を見せる
聞かれたことに正直応える
明らかなミスを見つけたら、事前に修正申告をする

それぞれを詳しく見ていきましょう。

顧問税理士と打ち合わせをする

税務調査が実施される際、顧問税理士がいる場合はまず税理士に事前通知が届き、希望日時が伝えられます。顧問税理士がいる場合は、税務調査当日の手順や注意点、対応方法を共有します。なお、税務調査には税理へ立会いの依頼を必ずしましょう。税理士は税法の専門家であり、調査の過程での理解や対応において欠かせない存在です。なぜなら、税法の微妙な解釈や税務署の主張に対して、法的根拠を示しながらの説明ができるからです。事前に誰がどの事項を説明するのかを確認し、円滑な対応を心がけましょう。仮に、顧問税理士をつけていなければ、スポットで税務調査に対応している税理士事務所に立会いの依頼も可能です。税務調査には専門的な知識と経験が求められるため、適切なサポートを受けることをおすすめします。

事前に必要な書類を準備する

税務調査では、準備すべき以下のような書類が前もって指定されます。

会社の概要や組織図
法人税や確定申告に関する申告書
決算書類
帳簿(元帳や入出金伝票など)
売上関連資料(見積書や納品書など)
仕入れや外注関連資料(見積書や請求書など)
経費に関する領収書などの資料
棚卸表
各種通帳
人件費に関連する資料(源泉徴収票や住民税の通知書など)

通常は、過去3期分の決算書類や帳簿の提出が求められます。準備が不十分だと、架空の収支計上などを疑われる恐れがあるため、不備がないように必要書類をしっかり準備しておくことが大切です。

協力的な姿勢を見せる

税務調査では、調査官との対立を選ぶのは得策ではありません。調査官はプロであり、抵抗することで逆に詳細に調査され、時間がかかったり新たな問題が発見されたりする可能性があります。調査官と対立するよりは、協力的な対話を重んじ、誠実に対応する方が有益です。例えば、的確に質問に答えたり、必要な書類を迅速に提出したりすることで、円滑に調査が進むでしょう。

聞かれたことに正直応える

税務調査中、調査員は申告書に記載された情報が正確であるかどうかを確かめるため、細部にわたって調査を行います。そのため、疑問点や不審な点があれば、調査員は質問をしてきます。その際には、正直に答えることが重要です。ただし、たとえ些細な会話や質問でも、それが実際の業務運営や財務状況に関わる重要な情報源となりえます。そのため、質問に対して黙秘するのは適切ではありませんが、分からないことや不明な点があれば即座に答える必要もありません。後から事実を確認するために関係者や帳簿をチェックしたり、顧問税理士に相談したりしてから回答しましょう。焦らず、慎重に事実関係を確認し、誠実に対応することが大切です。

明らかなミスを見つけたら、事前に修正申告をする

調査前にあきらかな申告漏れや誤りを見つけたら、事前に自ら修正申告しておくことをおすすめします。なぜなら、税務調査の結果、後から修正申告すると追加で納付しなければならない税金に対して、10%から15%に相当する過少申告加算税が加算されるからです。さらに、納税が遅れた場合は延滞税も課されます。事前に自ら修正申告を行うことで、過少申告加算税を回避できるだけでなく、税率を5%から10%に抑えられます。

まとめ

税務調査は不正を発見する役割も果たしますが、その根本的な目的は税金の公平な徴収です。企業や個人が公正に税金を納めることで、社会全体が健全な経済環境を維持できます。恐れるのではなく正確に税務申告を行い、社会貢献を果たすことが重要です。なお、税務処理には専門知識と労力が必要であり、素人では誤解や疑念を招くケースも少なくありません。そのため、常に信頼できる税理士と協力し、定期的に税務監査を受けることで、安心して事業運営に集中できるでしょう。