金(ゴールド)の税金はいくらから?計算方法や節税対策を解説

近年、金価格の高騰を背景に、資産運用の一環として金を保有・売却する方が増えています。一方で、「金を売ると税金がかかるのか」「どのくらいの利益から申告が必要なのか」といった不安や疑問を抱える方も少なくありません。損をしないためにも、事前に正しい知識を持つことが大切です。
本記事では、金の売却時にかかる税金の基本から計算方法、節税ポイントまでわかりやすく解説します。金の売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
・2025年、価格高騰で注目される「金の税金」問題
・金の売却にかかる税金の種類
・金を売っても税金がかからないケース
・金の税額はどう決まる?計算方法と税率
・金売却における税金対策
・金を高額で売却したら確定申告が必要
・まとめ
2025年、価格高騰で注目される「金の税金」問題
2025年現在、金価格は1グラムあたり17,000円前後と、過去最高水準を更新しています。金を売却した場合、課税対象となるのは売却額全体ではなく、購入価格や売却時の手数料などを差し引いた「利益部分(=譲渡益)」です。
また、よく比較される不動産とは異なり、金は保有しているだけで税金はかかりません。例えば、延べ棒やインゴットといった金地金(読み方:きんじがね)も、持っているだけなら固定資産税などの負担はありません。ただし、売却・相続・贈与といった「動き」があった場合は、所得税や贈与税・相続税の対象になる可能性があります。
金価格が上がり続けている理由
金価格が過去最高水準に達している背景には、以下のような複数の要因が影響していることが挙げられます。
✓ 工業用途やテクノロジー分野での実需の拡大
✓ ドル安による金の相対的な価値の上昇
✓ 有事やパンデミック時の「安全資産」需要
✓ 世界的な低金利政策による資産の逃避先
✓ 埋蔵量の限界による希少性
✓ 投資対象としての人気拡大 など
ただし、金はどんな状況でも値上がりするわけではありません。むしろ、市場環境が変化すれば、価格が下落する局面もあり得ます。資産として金を保有する際は、上昇要因だけでなく、下落リスクにも目を向けておくことが大切です。
金の売却にかかる税金の種類
金の売却にかかる税金は、以下の2つです。
● 消費税
● 所得税
それぞれを詳しく見ていきましょう。
消費税
金の購入時には、10%の消費税がかかります。
消費税は間接税なため、実際に税金を納めるのは事業者ですが、負担するのは消費者です。そのため、100万円分の金を購入する場合は消費税10万円が加算され、支払額は合計110万円となります
一方、金を売却する場合は、受け取る金額に消費税が上乗せされることがあります。買い取り業者などが「買い手」となるため、売却額に対して消費税を上乗せして受け取ることが可能です。
しかし、受け取った消費税を国に納める義務があるのは、法人や年間売上が一定以上の事業者のみです。つまり、一般の個人が単発で金を売却する場合、消費税の納税義務は基本的にありません。ただし、短期間で何度も売買を繰り返すと、事業とみなされ納税義務が生じる可能性があります。継続的な取引をする場合は、事前に税務署に確認し、適切な税務処理を行うことが重要です。
所得税
金を売って利益が出た場合、所得税の課税対象になります。これは、金が単なる現金のやりとりではなく、「資産を売却して得た利益」と見なされるためです。課税対象となる所得区分は、以下の3つです。
✓ 譲渡所得
✓ 雑所得
✓ 事業所得
それぞれの区分によって計算方法や税率が異なるため、自分のケースに応じた取り扱いを知っておくことが大切です。
譲渡所得として課税されるケース
個人が保有していた金を売却して利益が出た場合、「譲渡所得」として課税されます。譲渡所得は、金の保有期間に応じて以下の2つに分類されます。
♦ 短期譲渡所得:所有期間が5年以下
♦ 長期譲渡所得:所有期間が5年超
なお、金の譲渡所得は「総合課税」となり、給与所得など他の所得と合算して税率が決まります。利益が大きいと、累進課税により高い税率が適用されるため、保有期間や売却時期を意識した節税対策が重要です。
雑所得として課税されるケース
個人であっても、継続的に営利目的で金を売却し、収益を上げている場合は「雑所得」扱いになります。
事業所得として課税されるケース
金の売買を継続的に行い、商売にしている場合は、「事業所得」として扱われます。
事業所得として認められると、他の所得と損益通算が可能です。つまり、金の売却で赤字が出た場合でも、給与所得などと相殺して課税所得を減らすことが可能です。
金を売っても税金がかからないケース
年間の売却益が50万円以下であれば、税金はかかりません。
金の売却で得た利益は一般的に「譲渡所得」として課税されますが、年間50万円までは特別控除が適用されます。つまり、1年間の売却益が50万円以下なら税金はかからず、確定申告も必要ありません。
ただし、所得税は毎年1月1日から12月31日までの利益を基に計算されます。そのため、同年内に複数回売却し、利益合計が50万円を超えた場合は、翌年の3月15日までに確定申告が必要です。
金の税額はどう決まる?計算方法と税率
金を売って得た利益(譲渡所得)は、以下の計算式で求めます。
譲渡所得 = 売却価格 −(購入価格 + 売却にかかった費用)− 50万円の特別控除 |
なお、課税される金額や税率は、「金をどのくらいの期間所有していたか」によって変わります。
短期譲渡所得の場合
所有期間が5年以内なら、「短期譲渡所得」として課税されます。例えば、3年前に1kgのインゴットを750万円で購入し、1,700万円で売却した場合の利益は以下の通りです。
1,700万円 − 750万円 − 50万円 = 900万円 |
課税対象となる譲渡所得は900万円です。給与や年金、事業などのほかの所得と合計して、最終的な税額が決まります。
長期譲渡所得の場合
金を購入してから5年以上経過した後に売却すると、「長期譲渡所得」として扱われ、課税対象額が半分に軽減されます。計算式は以下の通りです。
課税対象額 =(売却額 − 取得費 − 売却時の手数料 − 特別控除50万円)÷ 2 |
なお、譲渡所得の特別控除は、短期・長期あわせて年間50万円までしか適用できません。複数の取引がある場合は、短期譲渡所得から優先して控除されます。
金の購入価格がわからないときの計算方法
相続などで取得した金地金や金貨の購入当時の価格が不明な場合、原則として「売却額の5%」を取得価額として計算します。例えば、100万円で売却した場合、取得価額は「5万円」と見なされ、95万円が譲渡所得の対象になります。購入価格がわからないと税負担が大きくなるため、金地金や金貨を購入した際は領収書や買付明細を必ず保管しましょう。
金売却における税金対策
金の売却にかかる税金を抑える方法は、以下の4つです。
● 5年以上保有して長期譲渡所得とする
● 複数年に分けて売却して課税対象を分散する
● 購入時の証明書・レシートを保管して取得費を正確に申告する
● 相続税の申告期限から3年以内に売却する
それぞれを詳しく見ていきましょう
5年以上保有して長期譲渡所得とする
金は、5年を超えて保有してから売却すれば、税負担が大幅に軽減されます。
金の売却益は「譲渡所得」として課税されますが、5年超の保有で「長期譲渡所得」となり、特別控除(50万円)を差し引いた後の利益の50%だけが課税対象になります。一方、5年以内に売却すると「短期譲渡所得」となり、控除後の利益全額がそのまま課税対象となります。税制上の優遇措置を活かすためにも、現金化の必要がない場合は、5年以上保有してから売却しましょう。
複数年に分けて売却する
金の売却益には、年間50万円までの特別控除が認められています。そのため、一度に多くの金を売却するのではなく、数年に分けて少しずつ売却すれば、課税対象額を抑えることが可能です。ただし、金の価格は日々変動しており、長期間売却を見送ると価格が下落するリスクもあります。そのため、税負担とのバランスを見ながら、タイミングを見極めることが重要です。
購入時に受け取る購入証明書を大切に保管する
金の売却益にかかる税金を正しく計算するには、購入時にもらう「購入証明書(計算書)」の保管が欠かせません。計算書は、購入日や購入日の金相場などが記載されており、譲渡所得を算出する「取得費」の根拠となる書類です。
万が一、計算書を紛失すると、取得費が不明とされ、売却額の95%が利益とみなされてしまいます。再発行は困難な場合が多いため、購入後は書類を必ず保管しておきましょう。
相続開始の3年10ヶ月以内に売却する
相続した金を売却する場合、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月)から3年以内に売却すれば、譲渡所得にかかる税金を抑えることが可能です。なぜなら、「取得費加算の特例」を適用できる可能性があるからです。
取得費加算の特例は、相続や遺贈で取得した財産を売却した際、相続税の一部を取得費に加えることで、譲渡所得を圧縮し税負担を軽くできる制度です。例えば、金を相続し800万円で売却した場合、本来は「売却額 − 購入時の取得費」で譲渡所得が計算されます。ここに、相続税の一部を取得費として加算できれば、その分だけ課税対象が減ることになります。
ただし、特例を利用するには、相続時に相続税を納めている必要があります。相続税を支払っていない場合は、たとえ期間内に売却しても特例の適用は受けられません。
なお、名古屋総合税理士法人は、相続・事業承継に特化した専門部門「相続税のクロスティ」を通じて、複雑な相続の問題にも対応しています。相続税の申告や節税対策でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
金を高額で売却したら確定申告が必要
金を売って得た利益が年間50万円を超えた場合、翌年の3月15日までに確定申告を行う必要があります。
現在、売却価格が200万円を超える取引において、売却者は買い取り業者にマイナンバーを提示する義務があります。また、買い取り業者は売却金額や売却者の情報を「金地金等の譲渡の対価の支払調書」として税務署に報告しなければなりません。そのため、申告を怠ると税務署から「〇月頃に金を売却していませんか?申告が漏れています」と指摘される可能性があります。
なお、近年、金の取引価格は過去最高額を更新し続けています。国税庁も収入の申告漏れに対し注意喚起をしていますので、「個人の売買は税務署にバレない」「税務署は個人の金取引まで見ていない」と油断せず、正しく申告しましょう。
名古屋総合税理士法人では、法人税や所得税などの申告業務はもちろん、節税のご提案や税務調査への備え、円滑な事業承継まで、幅広い税務サービスを提供しています。税金に関するお悩みやご不明点がありましたら、お気軽にご相談ください。
まとめ
金の売却益には譲渡所得として税金が課されますが、保有期間や売却の目的によって課税方法が変わるため、申告内容は複雑です。税金を国へ納付する義務があり、申告漏れや誤りがあるとペナルティを受ける可能性もあります。資産としての金を保有し、価格上昇時に売却を考えている方は、税制の仕組みをしっかり理解しておくことが重要です。税負担を抑えるためにも、専門家である税理士への相談をぜひご検討ください。