MAS監査とは?中小企業の成長を加速する効果と活用法を解説

事業を継続・成長させるためには、計画の策定・実行・改善が欠かせません。その重要性は多くの経営者が理解しているものの、実際に数値に基づく分析や将来を見据えた事業計画を立てている企業は決して多くありません。その背景には、経営計画の策定と検証には時間・手間・専門知識が求められるという現実があります。
そこで注目されているのが、「MAS監査」です。MAS監査とは、経営者が自ら考え、気づき、判断できる力を育む経営支援サービスです。単なる会計監査とは異なり、経営の思考の土台をつくり、意思決定力を高めることを目的としています。
本記事では、MAS監査の概要から、導入によって得られる効果や活用のポイントまでを分かりやすく解説します。5年後、10年後を見据えた持続可能な経営を実現したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
・MAS監査とは
・中小企業が直面する経営課題と現状
・MAS監査で得られる5つの効果
・MAS監査の流れ
・MAS監査パートナー選びのポイント
・まとめ
MAS監査とは
MAS監査(読み方:マスかんさ)とは、「未来の業績をつくる」ための経営支援サービスです。正式には「Management Advisory Service(マネジメント・アドバイザリー・サービス)」といい、税理士や会計事務所が中心となって、以下のような経営領域をサポートします。
● 経営戦略の立案支援
● 財務分析
● 業務改善
● リスク管理 など
MAS監査の最大の特徴は、経営者の頭の中にあるビジョンを数値化し、実行可能な経営計画へ落とし込むことです。現場も巻き込んで行動に移せる計画を作ることで、「何を優先すべきか」「どこに注力すべきか」が明確になります。その結果、経営判断のスピードと精度が大きく高まり、持続的な成長へとつながります。
従来の監査と何が違うのか
一般的な監査は、「過去」に行った取引や帳簿の内容が正しく処理されているかをチェックするものです。いわば振り返りを目的とした確認業務です。一方、MAS監査は「未来」に目を向け、今後どう経営を進めていくかを一緒に考えていく支援です。経営計画の策定から実行、検証までをサポートし、計画と実績のズレを分析しながら改善を重ねていきます。
特に、税理士法人や会計事務所との付き合いが長い企業ほど「申告業務だけの関係」になりがちです。MAS監査を導入することで、毎月の定例会議を通じて、数字をもとにした経営判断と実行支援が受けられるようになるでしょう。
中小企業が直面する経営課題と現状
中小企業では、経営者がこれまでの経験や勘を頼りに事業を進めているケースが少なくありません。かつてはそれで十分に通用した時代もありましたが、現在は物価高騰・人手不足・競争激化など、経営環境はめまぐるしく変化し、より複雑化しているのが実情です。
例えば、「これくらいの売上があれば利益は出るはず」といった感覚的な判断が、実際には原材料費や外注費の高騰によって赤字になっていたというケースは決して珍しくありません。このような経営課題の背景には、「自社の現状を正しく把握できていない」「今後の方向性が明確でない」といった根本的な問題が潜んでいます。
また、社長だけが数字や目標を把握していても、社員にそれが共有されていなければ、組織に主体性は生まれません。その結果、日々の判断がすべて経営者に集中し、対応の遅れや機会損失が重なることで、企業成長の足かせとなってしまいます。
中小企業にMAS監査が必要とされる背景
今、多くの中小企業に求められているのは「数字に基づいた経営」への転換です。急激に変化する経営環境の中で、勘や経験に頼った意思決定では、成長どころか現状維持も難しくなってきています。
MAS監査は、経営者の頭の中にある構想や判断を「見える化」し、現場と共有可能な計画に落とし込むことにあります。目標や課題を数値で明確にすることで、社内全体が同じ方向を向き、スピーディかつ的確な意思決定ができるようになります。
また、MAS監査では「計画→実行→検証」のサイクルを継続的に回すことにより、事業の軌道修正が早くなり、損失リスクの低減や成長機会の最大化につながります。単なる会計処理にとどまらない戦略的な伴走支援として、今後さらに重要性が増すでしょう。
MAS監査で得られる5つの効果
MAS監査で得られる効果は、以下の5つです。
● 経営者が「目標と現実のズレ」にすぐ気づき、打ち手を講じられる体制が整う
● 経営方針や優先すべき課題が明確になり、判断に迷わなくなる
● 社員との目標共有が進み、組織力が強化される
● 財務の見える化により、金融機関からの信頼が高まり融資を受けやすくなる
● 利益を生み出すための時間とコストの使い方が見えてくる
それぞれを詳しく見ていきましょう。
経営者が「目標と現実のズレ」にすぐ気づき、打ち手を講じられる体制が整う
MAS監査では、毎月の経営ミーティングを通じて、経営者が漠然と感じている課題や不安を数字と具体的な質問で整理します。例えば、「経費を見直すべきだ」という曖昧な指摘ではなく、「直近3か月で販促費が10万円増えた原因は何か」という問いかけを行います。こうすることで、経営者はなぜ販促費が増えたのか、どの部分が問題なのかを正確に理解しやすくなります。
また、管理会計の手法を用いて、商品別・顧客別の収益構造の可視化も可能です。売上があるのに利益が少ない商品や、過剰にコストがかかっている顧客などが明確になり、戦略的に「伸ばす事業」と「見直すべき取引先」が見えてきます。
数字を使って考える時間を定期的に設けることで、経営者が現場の「ズレ」に早期に気づき、迷いなく適切な対応をとれる経営環境を整えます。
経営方針や優先すべき課題が明確になり、判断に迷わなくなる
経営判断に迷いが生じる理由は、方針や課題がはっきりしていないからです。MAS監査では、経営者の頭の中にある考えを整理して、言葉や数字にして明確にします。
例えば、「売上を伸ばす」という漠然とした目標も、「利益率の高い商品に注力する」「不採算部門の見直しを優先する」といった具体的な課題に変わります。経営方針が明確になると、経営者はどの案件に力を入れるべきか迷わず判断できるようになります。
例えば、新商品の投入を決める時も、「利益率が高い商品群をさらに強化する」という方針があるため、無駄な投資やリスクを抑えてスピーディに決断ができます。結果として、会社全体の動きが速くなり、競争力の強化につながります。
社員との目標共有が進み、組織力が強化される
経営者の思いや方針が社員に十分伝わらないと、現場と経営陣で目標や方向性のズレが生じ、業務に迷いやストレスが出てしまいます。
MAS監査では、経営理念やビジョン、ミッションを言葉や数字で明確にし、社員と共有する支援を行います。これにより、「会社が何を大切にし、どこを目指しているのか」が全員に浸透し、社員は納得感を持って仕事に取り組めるようになります。
財務の見える化により、金融機関からの信頼が高まり融資を受けやすくなる
MAS監査により財務情報が整理・可視化されると、企業の経営状況を客観的かつ論理的に説明できるようになります。単なる売上や利益といった表面的な数値だけでなく、「どの部門で利益が出ているか」「キャッシュの流れはどうなっているか」「将来的な資金繰りにどのような見通しがあるか」といった、踏み込んだ内容まで把握できるようになるのです。
このような詳細なデータと将来計画を提示できる企業は、金融機関から「計画的で財務管理がしっかりした信頼できる会社」と評価されやすくなります。実際、経営計画書を添えて融資申請し、スムーズに審査が進んだ事例も珍しくありません。
また、経営者自身が「なぜ投資をするのか」「どう利益を出すのか」を説明できることで、金融機関との信頼関係がより強固になります。内部管理の強化だけでなく、外部からの信用力向上と資金調達の拡大にも大きく貢献するでしょう。
利益を生み出すための時間とコストの使い方が見えてくる
MAS監査では、日々の業務がどれだけ利益に貢献しているかを、時間単価や限界利益といった指標で可視化できます。これにより、以下のような非効率な部分が明確になります。
✓ 時間をかけているのに利益率が低い業務
✓ 高稼働でも利益が出ていない商品やサービス
数値をもとに、経営資源を「利益に直結する業務や商品」にどう配分すべきかを判断できるようになります。
MAS監査の流れ
MAS監査導入の流れは、以下の4ステップに沿って進みます。
1. 初回相談・ヒアリング
2. 現状分析
3. 経営計画の策定
4. 継続的なフォローアップ
まず、現在抱えている課題や不安、将来のビジョンについてお聞きし、対話を通じて「本当に目指したい姿」を明確にしていきます。次に、財務データや業務の流れ、時間の使い方、商品ごとの利益状況など、多方面から現状を把握します。
分析結果を踏まえて、3ステップ目となる経営計画の策定へ進みます。ここでは、単なる「数字の目標」ではなく、現場で実行可能な行動計画にまで落とし込むのが特徴です。経営者の考えと現実をすり合わせながら、現実的かつ効果的なプランを一緒に作り上げます。
最後に、毎月の定期面談を通じて進捗確認や計画と実績のズレをチェックします。必要に応じて軌道修正を行いながら、経営者が自ら判断し行動できる力を育て、組織全体の実行力も向上させていきます。
MAS監査パートナー選びのポイント
MAS監査の導入にあたって、最も重要なのは「誰と一緒に進めるか」というパートナー選びです。経営方針を共に考え、計画の実行から成果の創出まで伴走してくれる信頼できる相手を選ぶことが、成否を分けるポイントです。
具体的には、以下のポイントを満たすパートナーを選ぶことが大切です。
● MAS監査の実績があること
● アドバイスだけでなく、実際の行動支援まで行うこと
● 長期にわたり継続的に関わる意思があること など
感覚や経験だけに頼った経営では、問題を見逃しやすく、「もっと早く手を打つべきだった」と後悔するケースも少なくありません。だからこそ、目の前の数字だけでなく、経営者の考えや組織の実情にまで耳を傾け、寄り添いながら支援してくれるパートナーの存在が重要です。
名古屋総合税理士法人は、経営計画の策定から具体的な行動支援、成果創出まで一貫してサポートするMAS監査サービスを提供しています。「自社に合うか不安」「何から始めれば良いかわからない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
多くの中小企業が抱える課題の一つに、「忙しく働いているのに利益がなかなか残らない」というものがあります。これは、ヒト・時間・お金といった経営資源が利益に直結していないという構造的な問題が背景にあります。課題を解決するためには、感覚や経験だけに頼るのではなく、「数字と計画に基づく経営の仕組み」をしっかりと作り上げることが大切です。
MAS監査は、経営資源を効率よく利益に結びつける仕組みづくりを支援し、経営者が目標に向かって確実に進めるよう強力にサポートします。経営の方向性に迷いを感じたときや、将来の見通しに不安を抱えたときにこそ、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。