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2026年版|災害に遭ったら税金は戻る?雑損控除・減免制度で損を取り戻す方法

地震や豪雨などの自然災害は、ある日突然、私たちの生活を大きく揺るがします。中でも、名古屋・愛知は、南海トラフ地震の想定震源域に近く、将来的に大規模地震のリスクが高い地域とされています。

実際に被災した場合、住まいや家財の修繕、生活再建に追われ、「税金のことまで考える余裕がない」という方も少なくありません。しかし、災害による損害は、制度を正しく活用すれば、税金という形で一部を取り戻せる可能性があります。

本記事では、名古屋で災害に遭った場合に知っておきたい税金の基本と、雑損控除・減免制度を活用して損を取り戻すためのポイントをわかりやすく解説します。名古屋で災害と税金について相談できる窓口も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

※本記事の内容・数値は、2026年1月時点の公表資料および制度に基づいています。

目次

地震などの災害時、税金はどこから出て何に使われているのか
名古屋の災害対策・復旧に使われている税金とは
名古屋で災害に遭った場合の税金の減免・免除制度
災害関連の支援金・給付金に税金はかかる?
地震などの災害で家や車が被害を受けたときの「雑損控除」とは
名古屋で災害と税金について相談したいときの窓口
まとめ

地震などの災害時、税金はどこから出て何に使われているのか

災害が発生したとき、復旧や支援活動を進めるには多額の費用が必要になります。その財源となるのが、普段私たちが納めている税金です。税金は国と地方自治体によって集められ、それぞれの役割に応じて使われています。

税金の出どころと大まかな使い道について詳しく見ていきましょう。

災害時に使われる税金は「国税」と「地方税」に分かれている

災害時の財政対応は、「国」と「地方」がそれぞれの役割を担いながら進めます。

所得税や消費税などの国税は、国の予算として自衛隊の派遣や広域的なインフラ復旧など、全国規模での対応に充てられます。一方、住民税や固定資産税といった地方税は、地域の実情に即した行政サービスを支える役割を担っています。

災害対策・復旧・復興への使われ方

災害が発生すると、税金は以下のようなさまざまな場面で活用されます。

✓ 自衛隊、警察、消防の派遣や活動
✓ 避難所の運営
✓ 道路や橋、上下水道など公共インフラの再建
✓ 住宅の修繕支援、被災者への生活支援 など

初動対応は、市町村や県といった地方自治体が中心となって行います。ただし、被害が広範囲に及ぶ場合、自治体だけの予算では対応しきれません。そのため、被害規模が一定を超えると「激甚災害」に指定され、自治体の財政力に応じて国が復旧費の最大8割程度を補助する制度があります。

例えば、東日本大震災では、復興特別交付税や国庫支出金が活用され、多くの復旧・復興事業が国の財政支援によって進められました。このように、平時だけでなく、非常時にも社会全体の安全と生活再建を支える重要な役割を果たしています。

出典:内閣府|激甚災害制度について(外部リンク)

名古屋の災害対策・復旧に使われている税金とは

名古屋市では、市民が納めた市民税や固定資産税などの市税は、一般会計予算を通じて防災・減災から発災後の復旧・復興まで、段階に応じた対策に充てられています。

そもそも愛知県は、伊勢湾台風や東海豪雨といった大規模な自然災害を経験してきました。堤防が決壊し、市街地が浸水した記憶は、今も防災行政の根底にあります。こうした過去の教訓を踏まえ、近年は南海トラフ地震や活断層型地震を見据えた被害想定の再検討が進められています。

令和7年度の災害関連施策を見ると、想定される被害の把握だけでなく、大規模災害発生時に国や他自治体からの人的・物的支援を円滑に受け入れるための受援体制の整備にも力が入れられています。さらに、非常時の連絡手段を確保するための通信システムの更新や、避難に支援が必要な高齢者・障害者を対象とした個別避難計画の作成、防災拠点となる施設の整備など、地域の実情に即した施策にも税金が投入されています。地震による電気火災を防ぐ感震ブレーカーの設置助成などは、被害を「発生させない」ための代表的な取り組みと言えるでしょう。

出典:名古屋市|令和7年度主な施策等一覧(外部リンク)

名古屋で災害に遭った場合の税金の減免・免除制度

名古屋で災害被害を受けた場合、税金の負担を軽くする以下のような減免・免除制度や期限延長の仕組みがあります。ここでは、名古屋市・愛知県で整備された制度に加え、国レベルでの災害救済的制度を紹介します。

個人向けの制度

災害により被害を受けた個人に対しては、税金の負担を軽減するため、以下のような6つの制度が設けられています。

✓ 市民税・県民税の減免
✓ 森林環境税の免除
✓ 固定資産税・都市計画税の減免
✓ 軽自動車税(種別割)の減免
✓ 納税の猶予
✓ 所得税(国税)の軽減措置 など

まず、市民税・県民税については、災害により住宅や家財に大きな被害を受け、生活の再建が困難になった場合に減免が認められる代表的な地方税の救済措置です。被害の程度や所得状況などを踏まえ、個別に判断されます。

一方、減免の対象とならない場合でも、災害の影響で一時的に納税が難しいときには、納税の猶予制度を利用できます。税額自体を減らすものではありませんが、一定期間、納付を待ってもらえる制度で、延滞税が軽減または免除される点が特徴です。

法人向けの制度

法人向けには、事業再建を税務面から支える以下のような5つの制度があります。

✓ 災害損失の損金算入
✓ 資産の評価損の計上
✓ 災害損失特別勘定の設定
✓ 災害損失欠損金の繰越・繰戻し還付
✓ 国税の納税猶予制度

法人向けの災害救済は、個人のような「免除」ではなく、災害によって生じた損失を、法人税計算に正しく反映させるという考え方が基本になります。被害を受けた資産や事業活動への影響を適切に整理することで、税負担を軽減していく仕組みです。例えば、災害によって商品や原材料が滅失したり、建物・機械設備などの固定資産が使用できなくなったりした場合には、その損失額を法人税計算上の損金として処理できます。また、被災によって資産価値が著しく下落したときは、一定の要件を満たすことで評価損として計上することも可能です。

さらに、復旧に向けて今後発生が見込まれる修繕費用については、条件を満たせば、実際の支出前であっても損金算入できる特例が設けられています。復旧までに時間を要する場合でも、早期に税負担を軽減できる点は、事業継続の観点からも重要な制度と言えるでしょう。

また、災害の影響で資金繰りが悪化し、納税が困難となった場合には、法人税や消費税について国税の納税猶予制度を利用できます。申請により納付期限の延長や分割納付が認められ、無理のない形で事業再建を進められるでしょう。

災害関連の支援金・給付金に税金はかかる?

災害に関連して受け取る支援金や給付金の多くは、税金がかからないケースが一般的です。ただし、支給の目的や受け取る立場によって、税務上の扱いは異なります。

例えば、法人が従業員などに対して支給する災害見舞金は、被災による損害を補填する趣旨であり、かつ金額が社会通念上妥当と認められる範囲であれば、受給者側に所得税は課されません。また、支給した法人側では、福利厚生費として損金に算入できます。

一方、法人が災害を受けた取引先との関係維持や事業活動の回復を目的として、災害見舞金を支給したり、事業用資産を無償で提供したりした場合は、交際費等に該当しません。そのため、法人側では損金算入が可能です。ただし、見舞金等を受け取った取引先側では、原則、益金として処理する必要があります。

なお、法人が取引先そのものではなく、取引先の役員や従業員個人に対して直接災害見舞金を支給した場合は注意が必要です。この場合、取引関係の維持・回復を目的とする支出とは認められず、慰安や贈答の性格を持つものとして、交際費等に該当すると判断されます。

出典:国税庁|災害に関する主な税務上の取扱いについて(外部リンク)

地震などの災害で家や車が被害を受けたときの「雑損控除」とは

雑損控除は、地震や台風、火災、盗難といった思いがけない災害や事故によって、個人が所有する財産に損害を受けた場合に、損失額の一部を所得から差し引ける制度です。所定の要件を満たせば、確定申告を行うことで所得控除として適用され、所得税や住民税の負担を軽減できます。

なお、雑損控除と似たような制度に、「災害減免法」があります。正式名称は「災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律」といい、災害によって住宅や家財に被害を受けた人のうち、年間所得が1,000万円以下である場合に利用できます。雑損控除が所得から一定額を差し引く仕組みであるのに対し、災害減免法は、算出された税額そのものを減額または免除する点が特徴です。

ただし、両制度は同時に利用できません。被害の内容や所得水準によって軽減効果が異なるため、どちらが適しているかを比較したうえで選択することが重要です。

出典:国税庁|災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)(外部リンク) 出典:国税庁|災害減免法による所得税の軽減免除(外部リンク)

雑損控除の対象となる資産と対象外となるケース

雑損控除が適用されるかどうかは、以下の3点を満たしているかで判断されます。

✓ 損害の原因
✓ 財産の所有者
✓ 財産の種類

それぞれを詳しく見ていきましょう。

損害の原因が要件を満たしているか

まず、損害の原因が以下のいずれかに該当する必要があります。

♦ 地震・台風・大雨・雪害・落雷・火災などの自然災害
♦ 火災、火薬類の爆発など人為による災害
♦ 盗難や横領による被害 など

ただし、詐欺や恐喝による損害、長年の使用に伴う劣化、本人の不注意による事故などは、災害や被害であっても控除の対象にはなりません。

財産の所有者が誰か

雑損控除の対象となるのは、以下の人の財産に限られます。

♦ 納税者本人
♦ 生計を一にする配偶者や親族(その年の所得が48万円以下)

例えば、実家の家財が被災していても、生計を別にしている親族の所有物であれば、雑損控除は使えません。また、法人名義の財産も対象外です。

財産の種類が「生活に必要なもの」か

雑損控除の対象は、以下のような日常生活に通常必要な資産に限定されます。

♦ 自宅や居住用建物
♦ 家具・家電
♦ 自家用車 など

一方で、別荘や趣味性の高い宝石・骨董品、事業用の資産は対象になりません。

雑損控除と災害減免法はどちらが得なのか

災害減免法による所得税の減免と、雑損控除は併用できません。両方の要件を満たす場合には、納税者自身が、より税負担が軽くなる制度を選択する必要があります。判断のポイントは、「所得金額」と「被害額の大きさ」です。

まず、年間所得金額が1,000万円を超える方は、災害減免法を適用できません。一方、所得金額が1,000万円以下であれば、災害減免法と雑損控除のいずれも検討対象となります。なお、災害減免法では、所得金額に応じて所得税が以下のように軽減されます。

✓ 所得金額500万円以下:全額
✓ 500万円超750万円以下:2分の1
✓ 750万円超1,000万円以下:4分の1

そのため、所得が500万円以下で被害額が比較的限定的な場合は、災害減免法を選択することで、当年の税負担を大きく軽減できるケースが多いと言えるでしょう。ただし、災害減免法による軽減は、当年分の所得税に限って適用される制度です。被害額が大きく、1年分の税額だけでは軽減しきれない場合には、効果が限定的となる点に注意が必要です。

一方、雑損控除であれば、一定の要件を満たすことで、損失額が大きくその年の所得から引ききれない場合でも、翌年以降3年間にわたって繰り越して控除できます。損害額が大きい場合や、復旧に時間を要するケースでは、中長期的に税負担を分散できる可能性があるでしょう。

このように、どちらの制度が有利かは一概には判断できません。所得金額、被害額、復旧に要する期間を踏まえたうえで、両制度を試算し、状況に合った方法の選択が、想定外の税負担を避けるためのポイントとなります。

名古屋で災害と税金について相談したいときの窓口

名古屋市で災害による被害を受けた場合、税金に関する不安や疑問を相談できる主な窓口は、以下の3つです。

● 市区町村の相談窓口
● 税務署
● 税理士

市区町村の相談窓口では、被災証明書の発行や各種支援制度の案内など、生活再建に関する基本的な相談ができます。税務署では、雑損控除や災害減免法といった制度の概要や、確定申告の手続きについて説明を受けられます。

ただし、これらの窓口では、個々の所得状況や被害額を踏まえて「どの制度が有利か」を比較検討したり、将来の税負担まで見据えた判断を下したりするのは難しいのが実情です。そのため、より踏み込んだ判断を求める場合は、税の専門家である税理士へ早めに相談することが有効です。税理士であれば、所得水準や損害額、今後の見通しを整理したうえで、雑損控除と災害減免法のどちらが適しているかを検討できます。あわせて、申告手続きや必要書類の整理まで一貫したサポートを受けられる点も、安心材料といえるでしょう。

名古屋総合税理士法人は、開業以来50年以上にわたり、地元名古屋に根ざした税務支援を行ってきました。災害と税金についてお悩みの際は、地域事情と税務の両面に精通した名古屋総合税理士法人へ、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

災害時の税金対応では、支援金や見舞金の税務上の扱いに加え、雑損控除や災害減免法といった減免・支援制度の仕組みを理解しておくことが重要です。

雑損控除や災害減免法を実際に適用する場合には、確定申告を通じて被害状況や損害額を申告し、関係書類を提出する必要があります。また、損害の内容や対象となる財産の性質、保険金の受領状況など、判断にあたって確認すべき点は多く、専門的な判断が必要になる場面も少なくありません。

しかし、被災直後は生活や事業の立て直しが最優先となり、税務まで冷静に検討する余裕を確保するのは難しいものです。税金に関する判断や申告手続きを専門家に委ねることで、再建に専念しやすい環境を整えられるでしょう。