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【2026年最新】ガソリン旧暫定税率はいつまで続く|廃止の影響とは

2025年11月21日、高市内閣は総合経済対策を閣議決定し、ガソリンおよび軽油の「旧暫定税率」を廃止する方針を正式に表明しました。約半世紀続いてきた仕組みが見直されるのは、日本のエネルギー政策において大きな転換点です。

ただし、廃止による影響は「ガソリン価格の抑制が恒久化される」という生活面だけにとどまりません。地方財政やエネルギー政策に加え、中小企業の経営にも波及すると考えられています。特に、燃料費の割合が大きい事業では、一時的な資金繰りの改善を企業成長につなげられるかどうかが分かれ目になります。

本記事では、旧暫定税率の仕組みや廃止に至った背景、混同されやすいトリガー条項との違いを分かりやすく解説します。2026年からの新時代に求められる燃料費の実務ポイントもあわせて紹介するのでぜひ参考にしてください。

※本記事の内容・数値は、2026年2月時点の公表資料および制度に基づいています。

目次

そもそもガソリンの旧暫定税率とは
旧暫定税率とトリガー条項の違い
旧暫定税率廃止によるメリット・デメリット
旧暫定税率廃止が与える中小企業への影響|短期メリットと長期リスク
まとめ

そもそもガソリンの旧暫定税率とは

ガソリンの旧暫定税率(正式名称:当分の間税率)とは、本来のガソリン税に一時的に上乗せされている追加税率です。

ガソリン税の本則税率は、1リットルあたり28.7円(揮発油税24.3円+地方揮発油税4.4円)。ここに旧暫定税率として25.1円が加わり、廃止前は合計53.8円が課されていました。さらに、石油石炭税(2.8円/リットル)と、最終価格に対する消費税10%が上乗せされます。

なお、旧暫定税率はガソリンだけではありません。軽油にも1リットルあたり17.1円が上乗せされています。

出典:財務省|自動車関係諸税・エネルギー関係諸税に関する資料(外部リンク)

旧暫定税率は誰が払うのか

ガソリン税は、石油元売り業者が製油所からガソリンを「出荷」した時点で発生します。この段階で国へ税金を納めるため、法律上の納税義務者は石油元売り業者です。ただし、元売り業者が負担した税金は、以下の流れで販売価格に上乗せされます。

✓ 元売り業者:ガソリン税(旧暫定税率を含む)をコストとして価格に上乗せし、ガソリンスタンドへ卸売
✓ ガソリンスタンド:仕入れ値に利益を加えて消費者へ販売

税金が価格に転嫁される形となるため、最終的にはガソリン代を支払う消費者が実質的な負担を担っているのが実情です。

出典:国税庁|納税義務(外部リンク)

旧暫定税率が導入された背景と歴史

旧暫定税率は、田中角栄内閣の下、もともと道路整備の財源不足を補うため2年間の時限措置として始まりました。しかし、その後は景気や財政事情への対応を理由に延長が繰り返され、名称や制度の形を変えながら半世紀近く続く制度へと姿を変えていきました。

旧暫定税率をめぐる主な出来事は、以下の通りです。

✓ 1974年:道路整備財源を補うため、「暫定税率」として上乗せ課税を導入
✓ 2008年3月31日:ガソリン国会により暫定税率一時停止・ガソリン価格の大幅な下落
✓ 2008年4月30日:法案可決により、暫定税率復活
✓ 2008年5月1日:暫定税率、再び適用・ガソリン価格の大幅な値上がり
✓ 2009年4月:道路特定財源制度の廃止・一般財源へ
✓ 2010年:当分の間税率へ名称変更・トリガー条項創設
✓ 2011年4月:トリガー条項の凍結
✓ 2022年1月:ガソリン補助金(正式名称:燃料油価格激変緩和対策事業)創設
✓ 2025年11月28日:ガソリンと軽油の旧暫定税率廃止法案が可決
✓ 2025年12月31日:ガソリン旧暫定税率廃止
✓ 2026年4月1日:軽油旧暫定税率廃止

なお、ガソリンの旧暫定税率はすでに廃止されています。廃止直前の2025年12月30日時点では、価格変動を抑える目的で、補助金が1リットルあたり25.1円(旧暫定税率と同額)まで拡充されていました。

ガソリン補助金と旧暫定税率の関係について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

【関連記事】ガソリン補助金はいつまで?仕組みや期限、家計・企業への影響を解説

高市政権下でのガソリン旧暫定税率|野党合意までの経緯

2025年10月、高市早苗内閣が発足すると、政府は旧暫定税率廃止を重要な物価高対策の柱として打ち出しました。同年10月下旬には自民党・立憲民主党・国民民主党・公明党・共産党・日本維新の会の与野党6党が大筋で合意。2025年中に暫定税率を廃止する方向性が共有されました。

11月に入ると臨時国会での成立を目指す動きが一気に加速し、与野党間で合意文書が交わされます。そして11月28日、国会で旧暫定税率廃止法案が可決。1974年の導入以来続いてきたガソリンの旧暫定税率は、2025年12月31日で廃止されることが確定しました。財源面では慎重論もありましたが、国民・企業の負担軽減を優先する判断が採用された形です。

旧暫定税率とトリガー条項の違い

旧暫定税率とトリガー条項は、どちらも燃料価格に関わる制度ですが、以下のように性質が異なります。

● 旧暫定税率:税そのもの
● トリガー条項:税制や支出を一時的に調節する規定

旧暫定税率は、ガソリン税や軽油引取税に上乗せされている追加税率です。一方、トリガー条項とは、あらかじめ決められた条件を超えたときに、自動的に税制や支出を見直す規定です。日本では、急な燃料費高騰から家計や事業者を守る目的で導入されました。

トリガー条項とは

トリガー条項は、レギュラーガソリンの全国平均価格が3か月連続で1リットルあたり160円を超えたとき、翌月から暫定税率などの徴収を見直す仕組みです。価格が落ち着き、3か月連続で130円を下回ると、課税が再開されます。

しかし、東日本大震災後の復興財源確保を理由に条項は凍結され、現在まで運用が停止したままです。結果として、ガソリン価格が高騰しても自動発動は行われず、代替策として元売り会社への補助金で価格を抑える方法が取られています。

旧暫定税率廃止によるメリット・デメリット

旧暫定税率の廃止は、単に「ガソリンが安くなる」だけの話ではありません。家計や地域経済、企業活動、さらには財政運営や環境政策にまで影響が及ぶため、プラス面とリスクの両方を冷静に把握することが大切です。

旧暫定税率廃止によるメリット

旧暫定税率の廃止には、以下の3つの効果が期待されています。

✓ 家計負担の軽減と消費の底上げ
✓ 地方経済の活性化
✓ 物流コストの抑制による物価安定

公共交通機関が限られる地域で車は生活必需品です。燃料費が抑えられれば日常の移動コストが安定し、買い物やレジャーの回数が増える可能性があります。観光地へのアクセスもしやすくなり、地域のサービス産業への波及効果も期待できるでしょう。

さらに、燃料価格の下落は運送コストの削減に直結します。食品や生活必需品の価格上昇をやわらげる効果が見込まれ、インフレで負担が増している家庭にとっては、物価面での緩衝材として働く可能性があります。

旧暫定税率廃止によるデメリット

旧暫定税率廃止によるデメリットは、以下の3つです。

✓ 大幅な税収減と財源の再設計
✓ インフラ維持への影響
✓ 脱炭素との整合性

旧暫定税率の廃止は、国と地方を合わせて年間約1兆5千億円規模の税収減につながる見通しです。地方自治体にとっては、道路の維持管理や公共サービスの財源にも影響するため、安定した代替財源をどう確保するかが大きな課題となります。

また、燃料価格が下がると自動車利用が増える可能性があります。結果としてCO₂排出量が増えれば、政府が掲げる脱炭素政策との矛盾が指摘される場面も出てくるでしょう。さらに、失われた税収を環境関連税や自動車関連課税で補う形になれば、家計負担が必ずしも軽くならないという指摘もあります。

そのため、廃止のメリットをどこまで実感できるかは、以下のような今後の政策判断に左右されます。

✓ どの税を下げ、どの税で補うのか
✓ どの分野に重点配分するのか
✓ 企業や家計への支援策をどう設計するのか

今後も議論の方向性を見極める必要があるでしょう。

旧暫定税率廃止が与える中小企業への影響|短期メリットと長期リスク

旧暫定税率廃止が中小企業に与える影響は、以下の通りです。

● 燃料費の高騰リスクは去ったが、利益に直結しにくい
● 価格見直しが連鎖し、仕入れ・販売交渉が広がる
● 脱炭素政策に伴う新たなコストが増える可能性がある
● 運転資金の改善を見据えた資金配分が求められる

資金繰りの改善効果が期待される一方、将来的には補助制度の見直しや税制変更により、負担が増える可能性もある点に注意が必要です。

燃料費の高騰リスクは去ったが、利益に直結しにくい

旧暫定税率の廃止により、ガソリンや軽油にかかる税負担が軽くなります。特に、配送用トラックや営業車など、業務で車両を頻繁に使用する企業では、補助金打ち切りによるコスト急増の懸念が解消された分、資金繰りの見通しは立ちやすくなるでしょう。

しかし、燃料費の低下がそのまま利益拡大につながるとは限りません。なぜなら多くの中小企業では、燃料費はコスト全体の一部にすぎず、人件費や各種固定費など、以下のような支出が年々増加しているためです。

✓ 車両維持費
✓ 保険料やリース料
✓ 人件費
✓ 物価上昇に伴う諸経費 など

例えば、運送業で月10万円の燃料費削減が実現しても、同時に保険料の改定や車検費用の上昇で年間数十万円増えていれば、全体としてはプラス感が薄れてしまいます。今後の収益安定のためにも、単に燃料費の変動だけを見るのではなく、利益構造の見直しとセットで管理することが大切です。

価格見直しが連鎖し、仕入れ・販売交渉が広がる

旧暫定税率の廃止は、燃料費だけでなく「価格の前提」そのものを動かします。

燃料費は、多くの商品において輸送コストに組み込まれている費用です。輸送コストが下がれば原価にも影響を与えるため、企業は仕入れ価格や見積単価を見直す必要が出てきます。その結果、以下のような動きが広がります。

✓ 仕入れ先からの「仕入価格の再提示」
✓ 取引先からの「販売価格の見直し要求」
✓ 長期契約の条件変更や、見積もり基準の更新

特に中小企業では、大手取引先からの値下げ要請が強まりやすく、「旧暫定税率廃止でコストは下がったのに、利益はほとんど増えない」という状況に陥るリスクがあります。つまり、仕入れ・販売の両面で再交渉が連鎖する局面になる可能性が高くなるのです。

そのため、どこまで価格に反映させるか、また値下げ要請にどこまで応じるかの判断が重要になります。過去の価格高騰局面でようやく価格転嫁を進めてきた企業ほど、今回の値下げ対応によって利益率が再び圧迫されるリスクには、より慎重に向き合う必要があるでしょう。

脱炭素政策に伴う新たなコストが増える可能性がある

暫定税率の廃止により燃料価格が下がれば、自動車利用の増加を通じてCO₂排出量の増加につながる可能性があります。環境面への影響を踏まえ、政府は代替財源の確保や環境負荷への対応として、以下のような形で新たなコスト負担を求めてくる可能性があります。

✓ 環境関連税の強化
✓ 車体課税の見直し
✓ EV・省エネ設備への投資促進策 など

その結果、短期的には燃料費が軽くなっても、中長期的には「環境対応の投資コストが増える」という展開も十分に考えられます。目先の燃料価格だけで判断するのではなく、脱炭素政策の流れを前提に、自社のコスト構造や投資計画を検討していくことが重要です。

運転資金の改善を見据えた資金配分が求められる

キャッシュフローの改善は「コスト構造の根本的変化」を意味するわけではありません。燃料価格は政策や国際情勢に左右されやすく、将来的な再上昇も十分に想定されます。加えて、環境税や炭素課税の議論が進めば、別の形で負担が生じる可能性もあります。

だからこそ、今回改善した資金余力をどう配分するかが重要です。単なる内部留保にとどめるのではなく、将来の価格変動や制度変更に耐えうる体制づくりへ振り向けられるかどうかが、企業の持続力を左右するといえるでしょう。

名古屋総合税理士法人では、経営者のビジョンを数値計画と実行可能なアクションプランへ具体化し、実効性のある経営計画の策定をサポートします。制度変更を成長機会へつなげたい方は、お気軽にご相談ください

まとめ

税制やエネルギー政策は、企業の意思とは関係なく変化します。2026年度税制改正では、自動車購入時の負担軽減と、保有・使用段階での負担の再設計が進められました。さらに、旧暫定税率の廃止も含め、燃料や車体に関する課税の枠組みは大きな転換点を迎えています。制度は外部要因ですが、備え方は自社で選べます。制度の変化に翻弄されないためにも、まず自社の経営状況を素早く可視化できる体制を整えることが重要です。