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中小企業の決算対策|決算直前でもできる節税対策9選

法人にとって、決算時期は一年の総まとめとなる重要な時期の一つです。思いがけない黒字が出て喜びつつも、来期の税金負担が気になる経営者は少なくありません。特に、中小企業にとって、節税対策は重要な課題です。決算直前にあわてて経費を計上するだけではなく、より戦略的なアプローチが求められるでしょう。本記事では、中小企業の経営者が実践すべき決算直前でもできる節税対策について、具体例を交えながら詳しく解説していきます。無駄な税金を減らし、企業の資金を賢く活用する方法を探っていきましょう。

目次

決算対策とは
決算直前でもできる、すぐに実践したいお金のかからない節税対策4選
決算直前でもできる、お金はかかるが効果の高い節税対策5選
決算直前でもできる金融対策
決算対策は、早めの準備が大切
まとめ

決算対策とは

決算対策とは、大きく以下の2つに分けられます。

節税対策
金融対策

決算対策は単なる節税にとどまらず、企業の財務健全性や信頼性を高めるための重要な要素となります。しかし、「決算対策」と聞くと、多くの人が「節税対策」を連想するのではないでしょうか。通常、黒字の場合は節税対策を、赤字の場合は金融機関対策を行うのが一般的です。企業の経営状況によって、資金繰りの優先度を高めるべきか、黒字化を目指すべきかが変わってきます。自社の経営状況によって、資金繰りを優先するべきか、黒字化を目指すべきかを見極めるため、経営状況を正確に把握することが重要です。

なお、法人における節税対策の重要性について振り返りたい方は、以下の記事をぜひ参考にしてください。

【関連記事】法人が今すぐ実践すべき節税対策11選|なぜ節税対策が重要なのか注意点とは

決算直前でもできる、すぐに実践したいお金のかからない節税対策4選

決算直前でもできる、お金のかからない節税対策法は、以下の4つです。

不良在庫を見直して、売却損・廃棄損・評価損を計上
固定資産の見直しで、除去損を計上
決算日の変更
減資を検討

お金のかからない節税対策は、少ないコストで効率的に節税を実現したいときに有効です。資金を温存できるため、適切なタイミングでの支出や投資に備えられるでしょう。

不良在庫を見直して、売却損・廃棄損・評価損を計上

売れ残っている棚卸資産を処分することで、効果的な節税が可能です。売れ残った棚卸資産を処分する方法は、以下の3つです。

売却損:売れ残った在庫を原価よりも安く販売する
廃棄損:販売の見込みがない在庫を廃棄する
評価損:棚卸資産の価値を見直し、評価額を下げる

ただし、評価損の計上には厳しい要件があり、資産価値の変更が恣意的でないことを証明する必要があります。そのため、「売却損」や「廃棄損」と比べて認められにくい点に注意が必要です。

固定資産の見直しで、除去損を計上

不要な固定資産を処分することで、帳簿価額を除却損として経費計上が可能です。パソコンのソフトウエアなどの無形資産も同様に適用されるため、オフィスの整理をしながら節税につなげられるでしょう。さらに、除去損として計上することで、廃棄した資産にかかる固定資産税を今後支払う必要がなくなるというメリットもあります。例えば、使わなくなったオフィス機器や古いソフトウエアを整理することで、経費を増やしつつ、固定資産税の負担を軽減できます。これにより、会社の財務状況を改善する効果が期待できます。特に決算前には、こうした無駄な資産の整理が財務の効率化に寄与し、経営の健全化に役立つ重要な手段となります。

決算日の変更

急な利益増加に対応するための節税手段として、決算日の変更が有効です。決算日を変更することで、当期の納税を一時的に先延ばしし、約1年間の猶予期間を確保できます。期間中に、可能な限り節税対策を講じられるでしょう。ただし、決算日を変更すると、事業年度が1年未満になる可能性があります。この場合、税務計算や会計処理において特別な対応が必要です。特に、減価償却の計算では月割が適用されるため、慎重な処理が求められます。また、事業年度が短くても、決算業務の量が減るわけではありません。通常とは異なる処理が求められる場合があるため、ミスを防ぐために細心の注意を払うことが重要です。

減資を検討

資本金の減額には、さまざまな税務上のメリットがあります。例えば、資本金を1,000万円未満にすることで、設立後2年間は消費税が免税される特典があります。また、資本金が1億円以下であれば、少額減価償却資産の特例や欠損金の全額繰越控除など、税務上のさまざまな優遇措置を受けることが可能です。ただし、資本金の減額には、株主総会の特別決議や債権者保護手続きが必要となり、経営者単独で進められません。欠損補填金の範囲内であれば、普通決議で減資が可能ですが、減資は会社の財務状況を改善するために行われるものであるため、経営が順調であれば減資の必要はないケースが一般的です。

決算直前でもできる、お金はかかるが効果の高い節税対策5選

お金はかかるが効果の高い、決算直前でもできる節税対策は、以下の5つです。

少額減価償却資産の活用
中小企業倒産防止共済への加入
従業員への決算賞与支給
消耗品の購入
税制優遇を活用した研究開発費への投資

事業資金に余裕がある場合は、将来的な投資や従業員のモチベーション向上を見据えた節税策を検討しましょう。節税と同時に、企業の成長や長期的な利益につながる効果も期待できます。

少額減価償却資産の活用

少額減価償却資産の特例を利用して必要な備品を購入し、一度に経費計上することで、効率的に節税が可能です。通常、機械や設備、オフィス用品などの固定資産は、購入費用をその耐用年数にわたって分割して経費として計上する「減価償却」という手法を用います。しかし、中小企業が青色申告している場合には、30万円未満の減価償却資産については、取得年度に300万円を上限として全額を経費として処理することが認められています。オフィスで必要になるパソコンやプリンター、事務机などの購入を決算直前に行うことで、支出と同時に大きな節税効果を得られるでしょう。また、20万円未満の備品は一括償却資産として3年間均等に経費計上する方法もあります。法定耐用年数が4年のパソコンを一括償却すれば、1年早く経費に計上できるうえ、償却資産税の課税対象外にもなるため、さらに税負担を軽減できます。

中小企業倒産防止共済への加入

中小企業倒産防止共済への加入は、節税と経営リスク対策の両面で有効な選択肢の一つです。中小企業の連鎖倒産を防ぐために設けられた制度で、独立行政法人が運営しているため、制度の安定性も高いのが特徴です。共済に加入すると、年間最大240万円までの掛金を経費として計上できます。税負担を軽減しながら、取引先の倒産など万が一の事態に備えられるでしょう。また、中小企業倒産防止共済は、取引先が倒産した際には無担保・無利子で貸付を受けられます。急な資金が必要になった場合でも、無担保で低金利の貸付が利用できるため、資金繰りの安定に役立ちます。さらに、40か月以上の加入者には、解約時に掛金の100%以上が返戻金として戻る仕組みも整っています。解約による縛りが少ないため、柔軟に対応でき、企業の利益調整にも役立つでしょう。

従業員への決算賞与支給

決算期末に利益が予想以上に増えた企業が、従業員全員に賞与を支給することで、追加の損金を計上し、税負担を軽減できます。決算賞与の支給は、税負担を軽減できるだけでなく、従業員の士気を高める効果もあります。資金繰りやタイミングを考慮しつつ、有効に活用することをおすすめします。なお、決算賞与は、決算期末までに支給額を通知すれば、実際の支給が決算期末前でも後でも問題ありません。ただし、支給は、事業年度終了日の翌日から1か月以内に行うのが基本です。期日は法律で定められており、決算が3月末の場合は、4月末までに支払わなければなりません。また、決算賞与を損金として計上するには、支給通知額と実際の支給額が一致している必要があります。仮に、通知後に退職者が出たり、通知額と支給額に差異が生じたりした場合は、全員分の決算賞与を損金に計上できないため注意が必要です。

消耗品の購入

通常、消耗品は使用開始日に経費として計上しますが、以下の条件を満たす場合には、購入時に一度に経費化できます。

毎年決まった量を購入し続けていること
経常的に使用されるもの
経理処理が毎年同じ方法で行われていること

過去の購入と整合性を保ちながら、今期の税負担を軽減できるでしょう。

税制優遇を活用した研究開発費への投資

中小企業が研究開発や設備投資、従業員の雇用などを行う場合、特定の条件を満たせば、税制上の優遇措置を活用して大幅に節税することが可能です。優遇措置は、製造業などの大規模な研究施設を持つ企業だけに限られません。研究開発費の効率的な管理と税負担の軽減を同時に達成することが可能となるでしょう。研究開発費とは、企業が将来の成長を目指して、新製品やサービスの開発、または既存製品の改良にかかる費用のことです。特に、経済環境が急激に変化している今日の状況では、コスト削減と資金の有効活用は大きな課題となっています。そのため、研究開発費を節税目的で活用する際には、以下のさまざまな税制優遇措置を利用することが有効です。

税額控除
特別償却
補助金や助成金

税制優遇を賢く活用して、企業の成長を支える研究開発や設備投資に積極的に取り組むことが重要です。

決算直前でもできる金融対策

決算直前に行う金融対策は、企業の経営状況を正確に反映し、外部からの信頼性を高めるために重要です。国内には多くの金融機関がありますが、どの金融機関と融資取引を行う場合でも、決算書の提出が求められます。決算書は、企業の経営姿勢や方針を示す重要な資料です。正確性や継続性を確保し、金融機関や外部からの信頼を得るためにも、以下のポイントに注意して対策を講じましょう。

税務調査を避けるための対策
長期的な視点でのタックスプランニング
正確な経営状況の反映
決算処理の早期化 など

税務署だけでなく、金融機関に提出する決算書が適切に評価されるためにも、事前にしっかりと決算対策を行っておくことが必要です。

決算対策は、早めの準備が大切

決算対策は、「早めの準備」が大切です。
決算直前でも対応できる節税策はありますが、全ての対策がギリギリのタイミングで実施できるわけではありません。決算3か月前から収益や納税額の予測を立て、計画的に対策を進めることが求められます。また、対策によっては事前に資金繰りを見直すことが必要な場合もあります。急いで対策を講じるあまり、無駄な支出が発生してしまうと、本来の目的である税金の軽減が達成できなくなることもあります。そのため、少しずつ計画を立てて、段階的に税金対策を検討しましょう。また、節税対策には実施時の注意点が多く、税法も頻繁に改正されます。正確で効果的な節税を実現するためには、専門家のアドバイスが欠かせません。信頼できる顧問税理士や税理士と相談しながら進めることで、最新の税法に基づいた適切な節税策を講じられ、より良い節税効果を得ることが可能です。

なお、名古屋総合税理士法人では、50種類以上の節税ノウハウを長年に渡って蓄積し、「法人化節税🄬」など体系化しています。お客様の金融機関からの評価や財務状況を踏まえた最適な節税対策をご提案しますので、興味のある方はお気軽にご相談ください。

まとめ

会社の決算は、単に「節税」や「決算対策」を行うだけでは不十分です。税負担を軽減するためには、資金を適切に管理し、将来の投資や経営の健全化に必要な資金を確保することが重要です。お金のかからない節税対策は、資金の流出を最小限に抑えつつ、税負担を軽減できます。一方、お金のかかる節税対策は、企業の将来を見据えた投資や従業員への還元を通じて、長期的な成長を狙う際に選択します。企業の現状や将来の目標に応じて、どちらの対策を選ぶか適切に判断することが重要です。なお、次のような状況に該当する方は、税理士への相談をおすすめします。

複雑な税務や決算対策に直面している場合
将来の投資計画や資金管理について不安がある場合
税務調査に備えて、リスクを最小限に抑えたい場合

税理士は、複雑な税法や節税対策に精通しており、企業が最適な経営判断を下すためのサポートを提供します。専門家のアドバイスを受けることで、より効果的な決算対策と経営の健全化を実現できるでしょう。