内部統制とガバナンスの違い|中小企業の税務コンプライアンスの重要性
企業経営において、内部統制とガバナンスは密接に関連しながらも、その役割や目的は異なります。しかし、その違いはしばしば混同されがちです。特に中小企業においては、内部統制の不備や経営者の税務知識不足から、脱税や不正経理などの問題が生じやすい傾向にあります。適切な内部統制の整備、ガバナンスの強化、そして税務コンプライアンスの徹底を同時並行で進めることが重要です。本記事では、内部統制とガバナンスの違いをわかりやすく解説します。企業の持続的な成長と成功を支える税務コンプライアンスについても詳しく紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
・内部統制とガバナンスの違い
・不正防止には税務コンプライアンスの整備が必要
・中小企業が税務コンプライアンスを違反するリスク
・中小企業が税務コンプライアンスを向上する3つの方法
・税務リスクを軽減するには、税理士のサポートが欠かせない
・まとめ
内部統制とガバナンスの違い
内部統制とガバナンスの大きな違いは、下表のとおりです。
内部統制とガバナンスは、どちらも健全な企業経営を支えるための重要な仕組みですが、それぞれ異なる役割と目的があります。具体的には、「誰が・誰に対して監視・管理を行うのか」という視点で明確な違いがあります。しかし、内部統制とガバナンスは表裏一体の関係にあり、両者を一体的に捉え、連携して取り組むことが重要です。例えば、ガバナンスの強化によって経営陣の行動を透明にし、株主や投資家の信頼を得る一方で、内部統制の整備によって日常業務の正確性と効率性を確保できます。内部統制の整備・運用とガバナンスの強化を同時並行で進めることで、不正行為の防止や企業価値の向上につなげられるでしょう。
内部統制とは
内部統制とは、企業が経営目標を達成するために必要な規則や仕組みを整備し、適切に運用することを指します。なお、内部統制は、上場企業や一定規模以上の大企業に義務づけられています。しかし、中小企業や上場を目指す企業にとっても、内部統制の構築は重要です。なぜなら、内部統制の整備は、企業の透明性や信頼性を高め、企業価値の向上につながるからです。また、上場審査では、確認事項や作成書類が内部統制の整備に関わるプロセスと多くの点で重なります。上場準備を進めることで、自然に内部統制の整備につながるでしょう。
ガバナンスとは
ガバナンスとは「統治・支配・管理」を意味し、日本では「コーポレートガバナンス」として、企業経営における公正な判断と運営を監視・統制する仕組みを指します。近年、日本でコーポレートガバナンスが注目される背景には、次の2つの要因があります。
✓ 企業不祥事の増加
✓ 資金調達のグローバル化
具体的には、1990年代のバブル経済崩壊以降、不適切な会計処理や長時間労働といった問題が顕在化しました。これに対処するため、企業はガバナンスを強化して、問題を防ぐことが求められるようになりました。また、世界的にESG投資が注目されています。ESG投資とは、企業の「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の取り組みを評価して、投資対象を選定する投資手法です。ESG投資が注目される背景は、長期的に見て企業価値が高まると考えられているからです。日本企業に対する海外投資家の持株比率が高まる中、透明性や公正性を重視した経営が求められているでしょう。
不正防止には税務コンプライアンスの整備が必要
不正防止には、税務コンプライアンスの整備が欠かせません。ビジネス環境がますます複雑になり、法規制が厳しくなる中で、税務コンプライアンスの重要性は一層高まっています。ここからは、税務コンプライアンスとは何か、求められる背景について詳しく解説します。
税務コンプライアンスとは
税務コンプライアンスは、企業が税法を遵守し、適切に税金を申告・納付するための重要な取り組みです。適正な納税を実現するためには、企業のトップが積極的に関与し、内部の仕組みを整えることが必要です。例えば、大企業ではトップマネジメントが税務戦略を確立し、内部統制を強化することで、以下の効果が期待できます。
✓ 納税の透明性向上
✓ 不正防止
✓ 税務調査のリスク軽減
✓ 企業の信頼性向上 など
税務コンプライアンスを実現する取り組みにより、企業は法令遵守を徹底し、社会的信用を維持できるでしょう。
税務コンプライアンスが求められる背景
企業が税務コンプライアンスを重視するようになった背景には、国税庁の方針変更が大きく関与しています。国税庁は、大企業の税務コーポレートガバナンス体制を評価し、評価の高い企業に対して税務調査の頻度が低くなるメリットを提供しています。このような動きが増える中で、企業は内部での不正や不祥事を未然に防ぐための制度や仕組みを整備することが求められています。企業コンプライアンスへの意識が高まり、税務に関する透明性と信頼性を確保するための取り組みが重要視されていると言えるでしょう。
中小企業が税務コンプライアンスを違反するリスク
中小企業が税務コンプライアンスに違反するリスクは、以下の3つです。
● 社会的信頼の低下
● 企業評判の悪化
● 人材流出
● 法的トラブル など
例えば、顧客や取引先からの信頼を失うことで契約が破棄され、優秀な人材の流出につながるケースもあるでしょう。さらに、行政からの処分や経営者の逮捕などの深刻な事態に至れば、企業の信頼回復は極めて困難になります。これにより、資金調達が難しくなり、ビジネスチャンスを逃すことにもなりかねません。なお、多くの大企業はすでに対策を講じていますが、中小企業ではまだ十分な対応ができていないのが現状です。そもそも、コンプライアンスの重要性を知らない経営者や、手間がかかると敬遠している事業者も少なくありません。
また、中小企業は経営者と社員や取引先との距離が近いため、「問題が起きても話し合いで解決できる」と楽観的に考えてしまいがちです。しかし、事業規模が小さいほど、違反が発生した場合の影響は大きくなり、利害が対立すると当事者同士の話し合いでは解決が難しくなるでしょう。一つの不祥事が企業の存続に影響を与えることもあるため、法律や規制を遵守し、リスクを最小限に抑えることが重要です。
中小企業が税務コンプライアンスを向上する3つの方法
中小企業が税務コンプライアンスを向上させる方法は、以下の3つです。
● 適切な財務計画を作成する
● 内部統制とガバナンスを強化する
● 税務リスクを管理する
それぞれを詳しく見ていきましょう。
適切な財務計画を作成する
中小企業が税務コンプライアンスを向上させるためには、適切な財務計画の作成が不可欠です。財務計画とは、企業が将来的な財務状況を予測し、目標を達成するための以下の具体的な戦略と方針を立てることを指します。
✓ 収入や支出の見積もり
✓ 資金調達の計画
✓ 税金の計算と支払いに関する方針
✓ 税制変更への対応 など
例えば、財務計画は企業の利益を最大化し、株主価値を向上させるための重要な手段です。適切な経費計上や税制優遇措置の活用を計画に含めることで、企業の税負担を減らせるでしょう。なお、財務計画を効果的に運用するためには、経営者自身が税務に関する知識を深めるとともに、専門家のアドバイスを受けることが欠かせません。定期的な研修やセミナーに参加し、最新の税務情報を常に把握することで、中小企業は安定した経営基盤を築き、税務コンプライアンスの向上を実現できるでしょう。
なお、名古屋総合税理士法人では、経営者が押さえておきたい税務知識に関するセミナーを定期的に開催しております。ブログでは伝えきれない「ここだけの話」を知りたい方は、お気軽にご参加ください。
セミナーのご案内内部統制とガバナンスを強化する
内部統制とガバナンスが税務コンプライアンス向上に欠かせない理由は、以下の4つです。
情報の正確性と透明性の確保
✓ 規制への適合性の確保
✓ 税務調査への対応力の強化
✓ 信頼性とリスク管理の向上 など
内部統制は、企業内の業務プロセスや財務報告の正確性を保証するための仕組みです。内部統制の整備・運用により、税務申告に使用する財務情報の信頼性が高まり、誤った申告や不正を防止できます。一方、ガバナンスは企業の経営方針や意思決定の透明性を確保し、法的規制への適合を促進します。このガバナンスの一環として、税務コンプライアンスが重要な役割を果たします。適切なガバナンスを通じて、税法や会計基準に基づいた規制への適合を図ることが求められます。枠組みを整備することで、企業は税務法規を遵守し、信頼性の高い経営を実現できるでしょう。
税務リスクを管理する
税務リスクを管理することは、中小企業が税務コンプライアンスを確保するために重要です。税務リスクは、税法を遵守しなかったり、税務申告に誤りがあったりする場合に、以下のような事業運営に深刻な影響をもたらす可能性があります。
✓ 罰金
✓ 法的制裁
✓ 企業の評判低下 など
税務リスク管理は、税法違反を防ぐだけでなく、税務調査に伴う時間やリソースの無駄を避けるために欠かせない対策です。税務リスクを適切に管理することで、ビジネスの持続可能性と成長を支えられるでしょう。
なお、税務調査に入られたときの対応について詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてチェックしてみてください。
【関連記事】税務調査の対応は税理士に任せる?確率や時期、中小企業が取るべき対策税務リスクを軽減するには、税理士のサポートが欠かせない
税務リスクを軽減するためには、税理士のサポートが欠かせません。税理士は税務に関する深い知識と経験を持ち、最新の税法や規制に精通しています。新しい取引が発生した場合や重要な取引について早めに相談することで、税務リスクを大幅に軽減できるでしょう。また、定期的に税理士に相談することで、潜在的な税務リスクに気付きやすくなり、そのリスクの大きさを把握する感覚も養われるでしょう。税理士との連携を通じて、税務リスク管理と業務効率の最適化を実現し、安定した経営を維持しましょう。
自社のパートナーとなる税理士の選び方について詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。
【関連記事】中小企業の利益を守る税理士の選び方|依頼できる業務や注意点なお、名古屋総合税理士法人は、1972年の創業以来、名古屋で大規模・中堅企業の税務顧問として豊富な実績を積み重ねてきました。税務や経営の複雑な課題にも迅速かつ的確に対応し、個別のニーズに合わせた提案と情報提供を行います。信頼できるパートナーをお探しの方は、ぜひご相談ください。
まとめ
内部統制とガバナンスは、健全な企業活動のために欠かせない取り組みです。内部統制を強化することで、不正や法令違反を防ぎ、ガバナンスの目的である適切な情報開示と透明性を確保できるでしょう。また、ガバナンス体制の一環として税務コンプライアンスを重視し整備することは、企業経営の重要な要素です。税務コンプライアンスが徹底されることで、企業の信頼性と透明性が向上し、ブランド価値が高まります。しかし、内部統制やガバナンスの整備には専門的な知識と経験が必要です。特に中小企業においては、限られたリソースで適切に実施するのは難しい場合があります。税理士のサポートを受けることで、経営者は本業に専念でき、企業全体の効率と効果を高められるでしょう。なお、名古屋総合税理士法人では、税務に関するお悩みを持つ方に対して「無料相談」を実施しております。税務コンプライアンスを向上したい方は、お気軽にお問い合わせください。