税理士の上手な使い方|頼める業務内容や活用するポイント
企業経営を円滑に進めるためには、税務や会計の専門家である税理士のサポートが欠かせません。しかし、多くの方が「税理士=税金の計算や申告をするだけの存在」と考えてしまいがちです。その結果、税務申告のために決まった作業を毎月依頼するだけになり、税理士の専門的な知識や経験を十分に活用できていない企業も多いのではないでしょうか。本記事では、税理士に頼める業務内容や契約形態の違いについて詳しく解説します。税理士の上手な使い方もあわせて紹介するので、経営効率を高めたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
・税理士に頼める3つの業務
・税理士の独占業務以外で頼めるサポート
・税理士の顧問契約とスポット契約の違い
・税理士を上手に活用する4つのポイント
・まとめ
税理士に頼める3つの業務
税理士の独占業務は、以下の3つです。
● 税務代理
● 税務書類作成
● 税務相談
税理士は、税務に関する専門家であり、さまざまな業務を通じて企業をサポートします。ここでは、税理士に頼める主な業務内容について、詳しく見ていきましょう。
税務代理
税理士は、納税者に代わって税務に関する以下の手続きを行うことが可能です。
✓ 税金の申告・申請
✓ 不服申し立ての提出
✓ 調査や処分に対する主張・陳述 など
例えば、税務調査の際に必要な書類の準備や、税務署からの指摘に対する対応も税理士が行うため、納税者は負担を大幅に減らせるでしょう。
税務署類作成
本来、納税者が行うべき以下の税務書類の作成は、税理士に任せることで複雑な税務処理がスムーズに進みます。
✓ 確定申告書
✓ 法人税申告書
✓ 償却資産税申告書
✓ 源泉所得税納付書
✓ 法定調書 など
近年、会計ソフトの普及により、記帳代行は必ずしも必要ではなくなりましたが、それでも手間を減らしたいという理由で税理士に依頼する企業が多いのが現状です。例えば、確定申告書を正確に作成するためには、以下のような会計処理が必要です
✓ 帳簿付け
✓ 試算表の作成
✓ 決算整理仕訳
✓ 決算書の作成
税理士に依頼すれば、経費の計上方法や税制上の特例適用などの判断も簡単にできるため、申告内容の正確性が確保されます。また、税務書類に税理士の署名・押印があることで、金融機関からの信頼が高まり、融資が有利になるでしょう。
税務相談
税務相談は、税理士だけが行える独占業務です。税金に関する仕組みは、「知らない人が損をし、知識がある人が得をする」という制度も多く、特例適用しておらず損をしていても税務署が指摘し教えてくれるわけではありません。そのため、税金に関する具体的な以下の問題や状況について専門的なアドバイスを求めている方も少なくありません。
✓ 税金の還付を請求したい
✓ 自分がどれだけ税金を納めるべきか分からない
✓ 負担を軽くするためにどう節税すれば良いか知りたい など
近年、SNSやブログなどで税務相談に応じる人が増えていますが、税理士以外が税務相談に対応することは認められていません。税理士以外が相談業務に対応すると、罰金刑に課せられます。また、相談者側も誤った節税策を実行すると、税務調査で認められず申告漏れとなり、ペナルティが課せられる可能性もあるため注意が必要です。一方、税理士は業務上の善管注意義務(善良な管理者としての注意をもって委任事務を処理する義務)があり、税務相談で義務に反し納税者に損害を与えた場合、賠償責任を負うことになります。そのため、信頼に応える回答をし、責任を持つことが税理士の重要な役割です。税金に関する疑問や問題がある場合は、必ず税理士に相談しましょう。なお、税務相談とは、特定の個人や法人が抱える税に関する具体的な問題や状況について、専門的なアドバイスを行うことを指します。つまり、一般的な税の計算方法や、税法の教科書に記載されている内容について質問することは、税務相談には含まれません。
税理士の独占業務以外で頼めるサポート
税理士には「独占業務」以外にも、企業のニーズに応じた以下のサポートを提供します。
● 資金調達支援
● 経理代行
● DX支援
● 法人設立支援
● 賃貸不動産経営支援
● 節税提案
● 経営コンサルティング
● 補助金申請支援
● M&A支援
● 事業承継支援
● 相続・贈与支援
● 税務調査支援 など
例えば、企業が金融機関から運転資金や設備資金を調達する際には、税理士の専門知識が重要な役割を果たします。なぜなら、金融機関は、融資の可否を判断するために、事業計画書や資金繰り予定表の提出を求めるからです。提出する書類は、実際の財務状況を基に将来の見通しを示すものであり、その重要性は言うまでもありません。税理士の専門的な知識と経験を活用することで、信頼性の高い計画書を作成し、融資の成功確率を高められます。より適切な税務管理や経営戦略を実現できるでしょう。
税理士の顧問契約とスポット契約の違い
税理士の契約形態は、以下の2つです。
● 顧問契約
● スポット契約
企業規模や取引の複雑さ、内部リソースの状況に応じて、どちらの契約が適切かを選ぶことが重要です。
自社に適した税理士の選び方について詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。
【関連記事】中小企業の利益を守る税理士の選び方|依頼できる業務や注意点顧問契約の特徴
顧問契約とは、税理士と長期的に契約を結ぶことを指します。顧問契約を結ぶことで、企業の税務関連業務を税理士がほぼすべて代行してくれるため、経営者は安心してビジネスに専念できます。なお、経営に関する疑問や不安があるときは、電話やメール、定期的な面談を利用して顧問税理士に相談が可能です。スポット契約と異なり、自社の財務状況を深く理解した税理士から幅広いサポートが受けられるため、安心して経営を進められるでしょう。ただし、顧問契約を結ぶと、毎月の顧問料がかかります。顧問料は、スポット契約よりも包括的なサービスを提供されるため、費用が高額になるケースが一般的です。そのため、顧問料を支払うことで得られる節税効果がコストを上回る場合、顧問契約を結ぶメリットが大きくなります。しかし、そうでない場合は、特定の業務にだけ依頼するスポット契約の方が合理的かもしれません。
スポット契約の特徴
スポット契約とは、特定の業務を1回だけ依頼するための契約です。複数回の依頼や継続的な関係を必要としないため、必要な時に必要なサービスだけを利用できます。例えば、以下の業務をスポット契約で依頼することが一般的です。
● 記帳代行
● 決算書・各種申告書の作成 など
スポット契約は、必要な時にだけサービスを受けられるため、コストを抑えたい企業に適しています。ただし、申告書の作成をスポット契約で依頼する場合、会計処理(記帳)は自分で行うことになります。専門知識がないと、処理ミスが起こり、間違った申告書を提出するリスクがあります。また、短期的な関係であるため、税理士がクライアントの詳細を深く理解することは難しくなります。税の専門家であっても、節税対策や会計処理などすべてに対応するには難しいことを理解しておきましょう。
税理士を上手に活用する4つのポイント
税理士を上手に活用するポイントは、以下の4つです。
● 目的や課題を明確にする
● 自社の状況を正確に伝える
● 定期的な相談を行う
● セミナーや研修に参加する
ポイントを押さえておくことで、適切な税理士を選び、自社に合ったサポートを受けられるでしょう。
目的や課題を明確にする
税理士に効果的なアドバイスをもらうためには、まず「何を知りたいのか」「何を達成したいのか」を明確にすることが大切です。目的が曖昧なままでは、どれだけ良い税理士を見つけたとしても、自社に合ったサービスを受けるのは難しくなります。また、税理士にはそれぞれ専門分野や得意な領域が異なります。自社に適した税理士を見つけるためには、まず自社の抱えている問題やニーズを正確に把握することが重要です。自社の課題が明確になれば、その分野に強い税理士を選べるため、より効果的なサポートを受けられるでしょう。
自社の状況を正確に伝える
税理士に相談する際は、自分のビジネスや財務状況について詳細に説明することが重要です。具体的なアドバイスをもらうためにも、以下の書類を事前に準備しておきましょう。
✓ 過去の財務諸表
✓ 税務申告書
✓ 関連する契約書 など
なお、税理士による財務改善は、単に現状を分析するだけで終わりません。分析結果をもとに、将来的にどのような対策や施策を講じるべきか具体的な提案をしてくれます。例えば、適切な投資の方向性や資金調達の選択肢、借入金の効果的な管理方法など、税理士の助言は多岐にわたります。提案を実行することで、企業は経営の改善や生産性の向上を図り、さらなる成長を目指せます。相談前に税理士に問い合わせて、必要な書類を確認しておくと良いでしょう。
定期的に相談を行う
税理士と上手に付き合うためには、定期的に相談することが大切です。税理士の主な役割は、企業や個人の税務に関するサポートやアドバイスを提供することです。依頼に基づいてサポートを提供するため、クライアントが明確な要望や質問をしない限り、具体的な提案をしないケースもあります。しかし、質問に対してはしっかりと答えてくれます。こちらから積極的に質問をすることで、何に課題を感じているのかを伝えることができ、税理士の持つ知識と経験を最大限に引き出せるでしょう。特に、自社が考えている施策や計画に関連する税務リスクについて、具体的に洗い出してもらうことが大切です。ただし、最終的な判断や責任は経営者にあるという点を忘れてはいけません。税理士からのアドバイスに基づく決定も、責任を負うのは経営者です。「税理士に言われたから」「税理士の指示通りにしただけ」といった言い訳は通用しないため、自身の判断に自信を持つ必要があります。
セミナーや研修に参加する
税理士を有効に活用するための一つの方法として、セミナーや研修への参加があります。税理士が主催するセミナーや研修では、税金や会計の基本だけでなく、実践的な節税策や資金運用の方法など、日常の業務に直結する知識が提供されます。参加することで、税理士に依頼する際のコミュニケーションがスムーズになり、より具体的で役立つアドバイスを受けやすくなるでしょう。なお、名古屋総合税理士法人では、最新の税制や節税対策など、実務に役立つセミナーを定期的に開催しています。自社の経営戦略に反映させるヒントを得たい方は、お気軽にご参加ください。
まとめ
税務サービスを利用することは、税理士が持つ豊富な知識と経験を「有効に活用する手段」とも言えます。経営戦略や資金繰り、相続対策といった具体的な悩みを話すことで、税理士からの有益なアドバイスやサポートを得られるでしょう。税理士を身近な存在として捉え、気軽に相談することをおすすめします。