名古屋総合税理士法人トップ お知らせ・コラム 不動産の法人化は節税できる?メリット・デメリット、検討すべきタイミングを解説

Topics/Column

お知らせ・コラム

不動産の法人化は節税できる?メリット・デメリット、検討すべきタイミングを解説

近年、法人税率の引き下げや個人所得税の引き上げに伴い、法人化を検討する人が増えています。法人化によって節税効果が得られるだけでなく、資金調達がしやすくなるなどのメリットがあります。しかしその反面、決算申告の義務が生じたり、資金の使用が制限されたりするデメリットが存在するのも事実です。適切に法人運営をするためにも、メリットとデメリットを理解することが大切です。本記事では、不動産賃貸業における法人化の概要とともに、メリット・デメリットを解説します。法人化への移行を検討するタイミングについてもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。

目次

不動産賃貸業の法人化とは
不動産賃貸業を法人化する6つのメリット
不動産賃貸業を法人化する5つのデメリット
不動産を法人化するタイミング
不動産を法人化するための4ステップ
まとめ

不動産賃貸業の法人化とは

不動産賃貸業の法人化とは、個人で営んでいる不動産賃貸業務を法人に切り替えることを指します。多くの方は「法人化」と聞くと、従業員を雇うなど複雑な手続きを想像してハードルが高いと感じるかもしれません。しかし、実際には運営主体が個人から法人に変わるだけで、業務内容は変わらず、従業員を雇う必要もありません。なお、個人の不動産賃貸業による家賃収入は通常、不動産所得として申告され、確定申告の対象となります。家賃収入が増えると、所得税などの毎年の税金と相続税が高額化するという問題が生じます。不動産の数が増えるほど法人化による金銭的なメリットは大きくなるでしょう。

不動産賃貸業を法人化する6つのメリット

不動産賃貸業を法人化するメリットは、下記の6つです。

所得分散効果が高くなる
相続税が軽減できる
相続手続きが簡単になる
所得コントロールができる
福利厚生の恩恵が受けられる
融資を受けやすくなる

それぞれを詳しく見ていきましょう。

所得分散効果が高くなる

不動産賃貸業における法人化の最大のメリットは、所得や資産を分散することで節税効果を得られる点です。不動産の法人化によって、以下のポイントで税負担軽減が見込めます。

各人の給与所得控除の適用
各人の基礎控除の適用
個人間での所得移転による税負担軽減
個人と法人の税率差の活用

個人の所得税は、稼ぎが増えると税率が段階的に高くなる累進課税です。税率は最低5%から最大で45%まで上がります。一方、法人税はシンプルで、適用除外事業者を除いて所得が800万円までは一律15%、800万円を超えた部分には23.2%の税率が適用されます。さらに、中小企業は軽減税率が適用されるため、個人の所得税率よりも有利になるケースも少なくありません。不動産オーナーに集中していた所得を家族や不動産会社に分散させることで、一族全体の納税額を減少できるでしょう。

相続税が軽減できる

相続税対策として、以下の2つの側面から効果的です。

財産移転により資産蓄積の抑制
相続税評価方法の違いによる評価減

個人所有の場合、不動産の相続税評価額がそのまま評価額となります。一方、法人所有の場合は、株式の評価額が相続税の対象となります。通常、株式の評価額は不動産の評価額よりも低くなるため、法人化することで相続税評価額を下げられるでしょう。加えて、年間110万円の贈与税の基礎控除を利用して、株式を子や孫に贈与することも可能です。個人所有では難しい効果的な相続税対策が可能です。ただし、亡くなった方が法人の株式を100%保有している場合や、法人所有期間が3年以内の場合など、評価額が個人所有と同等になる場合もあります。また、相続税対策は一度行えば終わりではなく、税制や家庭状況の変化に応じて適宜見直すことが重要です。

相続手続きが簡単になる

相続が開始されると、個々の不動産ごとに所有権移転登記が必要です。そのため、相続手続きは、多くの手続きと費用が必要です。さらに、相続人が複数いる場合や数次相続が発生した場合は、不動産の共有持分が細分化され、売却困難な不動産となってしまうリスクがあります。一方で、株式の相続手続きは比較的簡単で、株主名簿の書き換えだけで済みます。また、生前に不動産を承継する場合、不動産ごとの対策は難しいですが、株式の承継はさまざまな方法で行えます。そのため、生前贈与を検討している方にとっても、不動産法人化は適合性があるでしょう。

なお、名古屋総合税理士法人では、相続専門の「相続税のクロスティ」を運営しております。生前にできる相続対策について詳しく知りたい方は、「相続税のクロスティ」へお気軽にお問い合わせください。

相続税のクロスティへ

所得コントロールができる

法人は、事業運営が主たる目的であり、個人のように事業者と消費者の立場を区別する必要がありません。そのため、多くの経費を計上できるため、税金負担を減らすことが可能です。例えば、法人化には以下の税務上のメリットがあります。

欠損金の繰越期間が10年
役員の給与所得控除
死亡退職金制度の活用
経営セーフティ共済の損金算入 など

さらに、法人は建物の大規模な修繕に備えて生命保険に加入するケースもあります。通常、支払った保険料の半分は経費として認められ、残りの半分は積立金として扱われます。経費とされた部分には法人税などの税率が適用され、毎期の税負担が軽減されるでしょう。

福利厚生の恩恵が受けられる

家族を役員として迎えることで、以下の3つの福利厚生が充実します。

厚生年金
小規模企業共済
企業型DC など

個人事業主は国民年金にしか加入できません。しかし、法人の役員として厚生年金に加入することで、将来的に国民年金だけでなく、厚生年金も受給できます。老後資金の不安が軽減できるでしょう。同時に、企業型DCでは従業員への退職後の生活を支援できます。従業員や役員にとっては、積立金、運用益ともに非課税となるため、税負担を軽減できます。また、企業もその掛金を全額損金算入できるため、社員への福利厚生としては非常に有益です。

融資を受けやすくなる

不動産賃貸業を法人化すると、金融機関から融資審査に通りやすくなります。なぜなら、法人は登記により情報が公開されており、個人事業よりも厳密な会計処理が求められるため、社会的信用が高いからです。法人の実績や借入状況にもよりますが、一般的に法人の方が個人よりも信用が高いため、より大きな融資を受けることが可能です。なお、会社を設立し経営を行っていると、さまざまな場面で資金が必要になります。経営上の課題を明確にし、長期で低金利の融資を得るためには、決算書の最適化が重要です。

名古屋総合税理士法人では、決算書の最適化だけでなく、中部地域の金融機関に詳しく、事業規模や業況に合わせて最適な金融機関のご紹介が可能です。資金調達における融資額のアップを実現したい方は、お気軽にご相談ください。

資金調達にお悩みの方はこちら

不動産賃貸業を法人化する5つのデメリット

不動産賃貸業を法人化するデメリットは、下記の5つです。

自由にお金を使えない
赤字でも税金がかかる
法人設立のコストがかかる
申告の手間がかかる
税務調査のリスクが高まる

不動産を法人化することは、事業拡大や財務面で多くのメリットがあります。しかし、すべての方にとって法人化が必要とは限りません。デメリットを詳しく見ていきましょう。

自由にお金を使えない

法人の利益は、会社の余剰金として管理されます。たとえ自分の会社であっても、個人のように自由に使うことはできず、使えるのは役員報酬として受け取る金額のみです。自由にお金を使いたい場合は、役員報酬を増やす必要があります。しかし、役員報酬を多くすると個人の所得が増え、その結果、所得税率が高くなるため注意が必要です。

赤字でも税金がかかる

法人では経営状況に関わらず、毎年、法人住民税がかかります。法人の所在地がある都道府県と市町村の両方に納める必要があります。法人住民税では、法人の所得額に基づく「法人税割」と、会社の規模に応じた「均等割」の合計を支払います。仮に、課税所得が赤字となった年度は、法人税割による法人住民税は免除されます。ただし、均等割に関しては黒字・赤字にかかわらず、道府県民税2万円と市町村民税5万円の合計である最低7万円の課税がなされることが一般的です。一方、個人事業では、所得がゼロであれば住民税は課税されません。赤字決算であっても一定の税金を支払わなければならないのは、大きなデメリットでしょう。

法人設立のコストがかかる

法人化するには、以下のコストがかかります。

設立登記
登録免許税
銀行口座の開設
定款作成 など

また、不動産事業からの撤退時にも解散手続きに費用がかかります。一方、個人で不動産投資をする場合は、基本的に申請は不要です。不動産賃貸業をやめる際も、廃業手続きをするだけで済みます。

申告の手間がかかる

不動産投資を法人化すると、法人としての決算申告が必要になります。決算とは、会社が定めた決算月に会計を締め、一年間の業績をまとめることです。毎月の取引を帳簿に記録し、決算月に申告書を作成して税金を計算する必要があります。個人の場合は、決算書や収支内訳書の作成で終わりますが、法人の場合は個人の確定申告よりも複雑で、提出する書類も多くなります。特に法人税申告書は、クラウド会計ソフトに対応していないことが多く、簿記や税法の深い知識が求められます。そのため、法人化すると、決算処理を顧問税理士に任せることが一般的です。

なお、名古屋総合税理士法人では所得税、相続税の両面から一時的な節税対策ではなく、継続的な資産管理や税務計画を含めトータルで「賃貸不動産経営」をサポートしております。不動産の法人化に興味がある方は、お気軽にご相談ください。

賃貸不動産経営サポートはこちら

税務調査のリスクが高まる

個人事業主が税務調査を受ける割合は全体の約1%ですが、法人の場合は約3%とされています。そのため、法人の方が税務調査を受けやすい傾向があります。法人が税務調査を受けやすい理由は、売上規模が大きく、経費として計上できる金額も多いためです。法人の場合、3〜5年に一度、個人事業主の場合は5〜10年に一度の割合で調査が行われています。法人化後は税務調査の可能性が高くなることを認識しておきましょう。税務調査に備えるためには、事前に対策を講じておくことが大切ですが、事業者がその適切な対応を行うのは容易ではありません。特に法人の税務調査に関しては、税理士に相談することをおすすめします。

なお、名古屋総合税理士法人では、税務署出身の税理士による税務調査対策を提供しております。具体的な準備から当日の立ち会いなど、税務調査に不安がある方は、お気軽にお問い合せください。

税務調査対策の詳細はこちら

不動産を法人化するタイミング

法人化すべき利益の目安は、所得税率が大幅に変動する800万〜1,000万円の範囲です。なかでも、所得が900万円を超えると法人化が有利になると言われています。なぜなら、所得が900万円を超えると、個人の税率が33%になる一方、法人の税率は15〜23.4%となり、節税効果が期待できるからです。ただし、不動産を法人化する際には不動産取得税や登記費用など、さまざまなコストが発生します。大規模な事業展開を目指す場合は、初めから法人化することでコストの効率化が図れるでしょう。

不動産を法人化するための4ステップ

不動産の法人化は、以下の4ステップです。

1. 会社設立に必要な情報を決定する
2. 定款を作成し、公証役場で認証を受ける
3. 法務局に登記申請を行う
4. 開業届と青色申告承認申請書を税務署に提出する

不動産管理会社を設立する際には、定款作成や設立登記などの手続きが必要です。また、設立初年度は経費が多くかかり、赤字になるケースも少なくありません。欠損金の繰越控除を受けるためには、開業届と青色申告承認申請書を必ず提出する必要があります。

まとめ

不動産賃貸業を法人化することで、節税効果や事業拡大のしやすさなど、多くのメリットがあります。長期的な利益拡大を目指すなら、個人経営よりも法人化を検討してみましょう。ただし、法人化がすべてのケースで有利になるわけではありません。設立費用や維持費が気になる場合は、事業が安定したタイミングで法人へ移行してもいいかもしれません。事業規模や将来の計画に応じて慎重に検討することが大切です。

名古屋総合税理士法人では、お客様の状況に応じた節税対策をシミュレーションし、その効果を確認した上で、賃貸不動産経営における具体的な節税方法や資金管理についてアドバイスいたします。また「賃貸不動産法人化セミナー」も定期的に開催しており、ブログでは書けない「ここだけの話し」など内容充実に努めております。ぜひお気軽にご参加ください。

賃貸不動産経営サポートはこちら 賃貸不動産法人化セミナーのご案内はこちら