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株取引の税金徹底解説!損失時の確定申告と節税法、税理士の活用術とは

株式投資は、資産運用や老後の資金形成に有効な手段として多くの人に利用されています。しかし、株式取引に伴う税金について正確に理解しておかないと、せっかく得た利益が大幅に減少してしまうかもしれません。本記事では、株取引にかかる税金の基本から、損失が出た場合の対策や節税方法まで、押さえておくべきポイントを徹底解説します。税理士を活用した税務戦略についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

目次

株取引にかかる税金の種類
課税対象となる株取引の利益
株取引で損失が出た場合の対策
株取引における節税対策
株取引における税理士の活用法
まとめ

株取引にかかる税金の種類

株取引で得た利益には、下表の税金が課されます。

合算すると、株取引の利益に対して合計20.315%の税金が課されます。なお、復興特別所得税は、東日本大震災の復興財源として、2037年12月31日までの期間限定で課される税金です。

株取引の税金はいくらからかかる?

株式投資で利益が発生したら、基本的に確定申告が必要です。例えば、会社員などで確定申告が必要ない方でも、「源泉徴収なしの特定口座」や「一般口座」で取引をして利益が出れば、確定申告が必要となります。一方、「源泉徴収ありの特定口座」を利用している場合は、利益に応じた税金が自動的に源泉徴収されるため、原則として確定申告の必要はありません。また、「NISA口座」での取引についても、税金が非課税扱いとなるため、確定申告は不要です。「確定申告が手間だ」と感じる方には、「源泉徴収ありの特定口座」や「NISA口座」を利用して株式投資するのが良いでしょう。

確定申告方法

確定申告とは、その年の1月1日から12月31日までに得た所得(譲渡所得や配当所得など)を翌年の2月16日から3月15日までの間に税務署へ報告する手続きです。株取引の利益を確定申告する際は、以下の書類を事前に準備しておくことが重要です。

確定申告書(第一表から第三表)
源泉徴収票
株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
取引残高報告書
経費計算書
確定申告書付表(第四表)

申告書類は、税務署で手に入れられるほか、国税庁のホームページからダウンロードして印刷することも可能です。なお、取引残高報告書は、申告時に提出する必要はありませんが、計算明細書に不備があった場合に備えて、申告後もきちんと管理しておきましょう。すべての書類を揃えたら、郵送または、税務署や確定申告会場に持参して提出します。万が一、書類に不備や記載漏れがあった場合は、税務署から電話やはがきで連絡がきます。

初めての確定申告で不安がある場合は、書類を確定申告会場に持参して係の方に相談しながら進めると安心です。ただし、申告期限が近づくと会場が混雑するので、なるべく早めに訪れることをおすすめします。また、e-Taxを使ってオンラインで申告もできます。ただし、e-Taxを利用する際には、パソコンやスマホに加えて、マイナンバーカードやICカードリーダー、またはマイナンバーカード対応のスマホが必要となるため、事前に確認して準備を進めておくことが大切です。

課税対象となる株取引の利益

課税対象となる株取引の利益は、以下の2つです。

株式を売却して得た「譲渡益」
株式を保有していることで受け取れる「配当金」

それぞれを詳しく見ていきましょう。

株式を売却して得た「譲渡益」

株取引で得た利益は、税法上「譲渡所得」として扱われます。譲渡所得とは、株式や不動産、ゴルフ会員権などを売買して得た利益も含まれます。株取引では、株を売ったときの価格から、購入時の価格や売買時に証券会社に支払った手数料などの費用を差し引いた「利益」が譲渡所得です。譲渡益は「売却益」とも呼ばれますが、株を「譲渡する」と「売る」は同じ意味と考えてもらえば分かりやすいでしょう。

例えば、100万円で買った株を150万円で売った場合、差額である50万円が譲渡所得となります。売却益である50万円に対して税金が課されますが、仮に、90万円で売却して損失が出た場合には、所得税はかかりません。

なお、株取引で得た利益についての税金は、「申告分離課税」という方式で計算されます。申告分離課税とは、給与所得や事業所得など他の所得とは別に、株取引で得た利益だけを分けて計算し、税金を支払う方法です。

株式を保有していることで受け取れる「配当金・分配金」

配当金・分配金は「配当所得」として扱われます。配当金とは、企業がその年に得た利益を株主に還元するもので、株主は持っている株数に応じて配当金を受け取ります。出資額が多いほど、配当金として受け取る金額も増えますが、企業が利益を上げていない場合、配当金は支払われません。一方、分配金は、運用会社が投資家に支払うお金です。定期的に収入を得られる一方で、特別分配金は元本(資産)から取り崩して分配されるため、将来的に価値が下がる可能性があります。

配当金・分配金は以下の2つから申告方法を選択します。

申告分離課税
総合課税

なお、株式取引で得られる配当金や分配金は、税法上「配当金・分配金に対する税金」として「源泉分離課税」の対象です。そのため、配当金や分配金のみの収入であれば、基本的に確定申告する必要がありません。また、源泉徴収税は、上場企業20.315%に対して、非上場企業は20.42%と税率が異なる点にも注意が必要です。

株取引で損失が出た場合の対策

株式投資では、必ずしも利益が出るとは限りません。時には損失が発生することもあります。しかし、損失を無駄にせずに「損益通算」や「繰越控除」を適用することで、次年度以降の税負担の軽減が可能です。

損益通算とは

損益通算とは、上場株式などの利益と損失を相殺できる制度です。例えば、B銘柄で50万円の損失を出し、他の上場株式で30万円の利益が得られた場合、損益通算を適用することで、課税対象となる利益は20万円(50万円 – 30万円)です。課税対象となる利益を減らし、納税額を抑えられるでしょう。ただし、損益通算の対象となるのは、上場株式などの譲渡所得に限定されます。非上場株式や、仮に、事業所得が黒字であっても、事業所得や不動産所得など、他の所得との相殺はできないため注意しましょう。

繰越控除とは

損益通算しても、通算しきれなかった損失については「繰越控除」を利用できます。繰越控除とは、発生した損失を翌年度以降に繰り越し、将来の利益と相殺することで税負担を軽減できる制度です。最大3年間の繰り越しが可能で、長期的な税務戦略の一環として活用できます。ただし、繰越控除を利用するためには、損失が発生した年とその後の3年間、毎年確定申告する必要があります。期間中に株式を売却しなくても、忘れずに申告しましょう。

株取引における節税対策

株取引では、利益を上げるだけでなく、「節税」も同じくらい重要です。株取引においては、配当金や売却益に対して20.315%の税金が課されます。例えば、100万円の投資で10万円の利益を得た場合、そのうち約2万円(10万円 × 20.315%)が税金として引かれ、実際に手元に残る利益は約8万円です。税金は正しく納めるべきものですが、一方で利益を減少させる要因にもなります。利益を効果的に積み上げるには、適切に納税しつつ、節税対策で税額を圧縮することが大切です。

節税対策で押さえておきたいポイントについて知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。

【関連記事】法人が今すぐ実践すべき節税対策11選|なぜ節税対策が重要なのか注意点とは

NISAとiDeCoを活用する

株取引で得た利益にかかる税金を軽減するためには、NISA(少額非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)をうまく活用することが非常に効果的です。NISAは、株式投資の節税に、iDeCoは将来のための資産形成と税金対策に適しています。

通常、株式投資で得た運用益には20.315%の税金がかかりますが、NISAを利用すれば、一定の投資額まで非課税で運用が可能です。また、2024年から導入された新しいNISAでは、成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能となり、非課税で投資できる金額が拡大されました。配当金や売買で得られる利益を非課税で受け取れるので、より多くの資産を効率的に増やせるでしょう。

一方、iDeCoは、老後の資金形成を目的とした制度で、毎月一定額を積み立てることで運用し、その利益が非課税になります。また、積み立てた掛金は全額が所得控除の対象となるため、「所得税」と「住民税」の軽減にもつながります。ただし、iDeCoの資金は60歳になるまで引き出せない点に注意が必要です。

それぞれのメリットを理解し、自分の投資目的やライフプランに合わせて活用していきましょう。

投資運用会社を設立する

株取引で利益が増えた場合、税金の負担を軽減するために、投資運用会社を設立することが一つの方法として考えられます。例えば、投資資金が1,000万円を超えるようであれば、会社を設立することで個人での取引よりも税金の負担を軽くできる可能性があります。なぜなら、会社を設立すると法人税率が適用され、個人の所得税よりも低い税率で課税される場合があるからです。また、会社として経費を計上することで、課税所得を減らせる点も大きなメリットです。さらに、会社設立には社会保険料を抑える効果もあります。サラリーマンが独立して会社を立ち上げた場合、役員報酬を自身で設定することが可能です。報酬額を低く設定することで、社会保険料の負担を軽減できるでしょう。ただし、会社設立には初期費用や運営コストもかかるため、しっかりとした計画を立てることが重要です。

法人化のメリット・デメリットについては、以下の記事もぜひ参考にしてください。

【関連記事】不動産の法人化は節税できる?メリット・デメリット、検討すべきタイミングを解説

株取引における税理士の活用法

株取引を行う際、税理士に相談することで得られるメリットは多くあります。まず、税理士は正確な申告をサポートし、納める税金を減らしたり、還付金を正確に計算する手助けをします。近年、証券口座にマイナンバーをひも付ける動きが進んでおり、税務当局はマイナンバーを通じて複数の損益を効率的にチェックできるようになりました。制度改正により、証券会社はマイナンバーの取得が義務化され、申告漏れが発覚しやすい環境が整っています。申告漏れによるペナルティを防ぐためにも、税理士の専門的なアドバイスが欠かせません。専門家のサポートを受けることで、適切な申告が可能となり、余分な税金やペナルティを避けられるでしょう。

税理士の選び方について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてチェックしてみてください。

【関連記事】中小企業の利益を守る税理士の選び方|依頼できる業務や注意点

まとめ

株取引は資産形成に有効ですが、利益を最大化するには税務への理解と対策が重要です。特に初心者にとっては税制の仕組みが複雑で、損益通算や繰越控除の活用が難しく感じられるかもしれません。しかし、制度を理解し、適切に活用することで、損失を最小限に抑え、将来的な利益をしっかりと確保することが可能です。また、税理士をパートナーとして活用すれば、さらに一歩進んだ税務戦略を立てることが可能です。自分だけでは気づかない節税策をもとに、効率的に資産を増やしましょう。

なお、名古屋総合税理士法人では、経営者が押さえておきたい税務知識に関するセミナーを定期的に開催しております。ブログでは伝えきれない「ここだけの話」を知りたい方は、お気軽にご参加ください。

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